スコポラミン軟膏

  • 2013.12.02 Monday
  • 10:01
黒字は一般的な内容、赤字は当院(神経内科クリニック)での対応や考え方を記しています。

【はじめに】
唾液はパーキンソン病やパーキンソン症候群では分泌過多となり、脳卒中や ALS など球麻痺を伴い自然に飲み込むことができなくなる疾患でも結果的に増加します。
誤嚥を認める場合には、唾液増加は喀痰量増加の原因となり、呼吸筋麻痺があり咳嗽が弱くなっている場合には痰の喀出困難は困難になります。
そのため唾液増加は喀痰量増加や喀出困難は呼吸苦に直結します。
また球麻痺を伴う場合には、唾液過多は喀痰吸引を頻回に行わなければならないという介護面での問題にも直結します。
嚥下機能の回復のために嚥下リハビリテーションや、パーキンソン病薬の投薬調整などを行いますが、それでも問題が解決しないときには唾液量を減少させることを試みます。
唾液減少を副作用に持つ抗コリン剤や抗ヒスタミン剤の内服薬の使用も考慮しますが、効果が不十分であったり、他の作用のために使用できない場合も少なくありません。
そのような場合にはスコポラミン軟膏の使用を考慮します。
しかしスコポラミン軟膏は薬事収載薬ではないために、後述する理由から研究目的でしか利用できないと考えています。

【適応】
・唾液量の増加や流涎によるトラブルがあるが、他の方法で、そのトラブルを解決できないケース
・スコポラミン使用の禁忌ではないケース
・スコポラミン軟膏の使用を本人(本人が意思表出が困難な場合は主介護者)が了解したケース

【スコポラミン軟膏を使用する時の手順】
(A:医療機関としての準備)
Step 1:医療機関でスコポラミン軟膏を使用することを決定します。
 スコポラミン軟膏はこれまでの研究で、唾液過多による諸症状を緩和すること可能であることが知られています。
 また重大な副作用の頻度は低いとされており、多くのALS診療ガイドラインを含め種々のガイドラインにも記載されています。
 しかしスコポラミンは薬事収載薬ではないため、各医療機関において適切な対応が必要です。
 当法人では、平成22年度に院内での話し合いを行い、スコポラミン軟膏の使用を決定しています。
 医師一人の診療所では、その医師の判断によると思います。
 
Step 2:スコポラミン軟膏を確保します。
 現状では薬剤として認められていないため国内の販売はなく、あくまで研究という立場で個々の医療機関内で調剤して対応するしかありません。
 (海外では吐気止めとしてパッチ剤が販売されています)。
 つまり「自院内で作成する」か「作成してくれる薬局を見つけ、作成してもらう」ことになります。
 また通常の調剤薬局での対応は困難です。
 当法人では、懇意にしている調剤薬局に依頼し作成して頂いています。
 このStepが最も超えにくいハードルと考えています。
 当院では大阪府豊中市にあるグリーンメディック薬局に作成を依頼しております。
 (なお、グリーンメディック薬局では、患者さん・ご家族さんからの直接のご紹介にはお答えされておりません。
 医療機関からのご連絡をお願いします。
)
 
(B:患者に使用する前の準備)
Step 3:患者・家族にスコポラミン軟膏使用の説明を行います。
 当法人では、文書を用いて以下の内容を説明しています。(別紙1)
 (この説明は、あくまでも当法人内で決定したものであって、他者によって検証されたものではありません。) 
 ・使用目的
 ・使用方法
 ・予想される効果と副作用
 ・スコポラミン軟膏以外の治療方法
 ・試薬であることの説明
 ・臨床研究として実施すること
 ・費用負担
 ・連絡先
  (承諾書・同意書等の文書を作成するか否かは、各医療機関ごとで対応を決めます。)
 
Step 4:スコポラミン軟膏の作成
 スコポラミン臭化水素酸塩三水和物 1 gを親水性軟膏 20 g を用いて 約5%スコポラミン軟膏を作成します。(スライド1〜5)
 当法人では、スコポラミン臭化水素酸塩三水和物を少量の流動パラフィンで溶かし、白色ワセリン20gを用いて作成しています。
 前述したように、調剤薬局に依頼し作成していただいております。
 スコポラミンは常備されている試薬ではないので、発注してから手元に届くまで1週間程度かかります。
 当法人では5gずつ軟膏容器に分けて、患者に渡しています。
 (作成の手順は、スライドに示します。)
 
(C:スコポラミン軟膏の使用方法と効果の評価)
Step 5:スコポラミン軟膏の貼付
 5%スコポラミン軟膏を調剤し、約 0.1〜0.5g 程度をカットバンに綿棒等を用いて塗布し、両耳介後部の乳様突起付近に貼付します。(図1)
 当法人では、少量(目分量)のスコポラミン軟膏をカットバンに塗布し、片側の両耳介後部の乳様突起付近に貼付することから開始します。
 理由は効果には個人差が大きいためです。女性は口渇を訴える方が多い印象があります。
 また開始量で強い口渇感が出た場合には、使用継続に拒否的な反応を示す患者さんも少なくないので少量から開始することにしています。
 効果が乏しい場合には、増量します(両側に貼る)。
 交換日が分かるように、カットバンには日付を記入します。
 
Step 6:スコポラミン軟膏の効果の評価
 効果判定は、唾液の減少で行うことになりますが、唾液量を直接的に測定し評価することは困難です。
 ALSなどの意思表出が可能なケースでは、本人の自覚症状を評価スケールに使用します。
 意思表出が困難なケースでは、主介護者の介護負担を評価スケールに使用します。
 唾液が減少したとしても、口渇や唾液の粘り気が強くなることで、評価が低くなることがあります。
 当法人では、本人・家族に全般的な評価を行って頂くために、NRS(Numeric Rating Scale)を使用しています。
  
Step 7:スコポラミン軟膏の交換頻度
 これまでの使用経験から、スコポラミン軟膏の効果は個人差が大きいと考えています。
 初回にスコポラミン軟膏を使用する時に、効果の持続時間を評価します。
 交換頻度は1〜7日に1回程度としています。当法人の使用経験から3日ごとに交換する場合が多いです。
 これまでの研究でも、確立した使用方法はありません。
 
【費用】
スコポラミン軟膏作成には、「原料費」+「手技料」の費用が必要です。
スコポラミン臭化水素酸塩三水和物は1g=6700円、10g=34900円と高額です。
(参考:東京化成工業株式会社 http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/S0021/)
流動パラフィン(1250〜3000円/500mL)やワセリン(1000円前後/500g)、軟膏壺(10mL、10円未満/個)の価格は特に問題にする必要はないぐらい低額です。
一般的な使用量は、0.2〜1.0g/3日です。つまり20gのスコポラミン軟膏は、60〜300日分に相当します。
スコポラミン軟膏を使用する対象者が少ない場合には、軟膏を20g(スコポラミンとして1g)ずつ作成することになります。
5%スコポラミン軟膏20gを作成するためには、原料費だけで7000円弱の費用が必要です。
手技料に関しては、院内で作成する場合には問題になりませんが、調剤薬局に依頼する場合には協議の上、決定する必要があります。

【費用負担に関する考え方
スコポラミン軟膏によって唾液を減らす行為は、保険外診療と考えられます。
厚生労働省の考えでは、「保険診療と保険外診療の併用は原則として禁止しており、全体について、自由診療として整理される。」とされています。
またクリニックがすべての患者に無償でスコポラミン軟膏を渡すことは、ダンピング診療と判断される可能性もあります。
そのため医療機関はスコポラミン軟膏を使用する際には、臨床研究と位置づける必要があると考えられます。
その場合、費用は医療機関の負担になります。
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(別紙1)
スコポラミン0
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(別紙1テキスト)

スコポラミン軟膏の使用について
 
1. 使用目的】
あなたの病気の進行にともない、唾液の飲み込みが悪くなり流涎の症状が出現します。
 
今回使用する薬品について 
スコポラミンという薬剤は抗コリン作用をもち、検査前のお腹の動きを止めたり
痛みをとめたりする薬と同じ成分です。国内では、医療用の医薬品としてではなく
試薬として取り扱われています。
 
今回使用を行なうに至った経緯と投与の必要性
抗コリン作用を有し、耳下腺に対して唾液の分泌を抑える働きが期待できるため
症状の軽減のためこの薬剤の使用を考えています。
当クリニックではこの薬剤の効果で、同じような症状を持つ患者さんの苦痛が軽減される
ことをめざして、臨床研究を行うことにしておりこの研究にご協力いただければありがたいと考えています。
 
2. 使用方法】
5%スコポラミン軟膏0.1gをカットバンに塗布し、両耳介後部乳用突起部に貼付します。
13日に1回張り替えます。
 
3. 予想される効果】
唾液の分泌が少なくなり、流涎の症状が改善することが期待できます。
そのため唾液の垂れ込みによる誤嚥性肺炎の予防や吸引回数の減少が期待できます。
 
4. 予想される副作用】
口渇、悪心、嘔吐、発汗減少、尿閉、便秘、目の調節障害、眠気、発疹があります。
軟膏使用前の状態を著しく逸脱する範囲で出現した場合は中止する必要があります。
副作用が出た場合は、他の薬物と同様に保険診療の範囲内で適切な治療を行ないます。
 
5. あなたの症状に対する他の治療法について】
三環系抗うつ薬や、トリへキシフェ二ジル塩酸塩などの抗コリン作用を持つ薬の使用。
唾液専用低圧持続吸引器による持続吸引
などがあります。
 
6. 薬代等の費用負担について】
当クリニックで全額負担いたします。

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(スライド1〜5)
スコポラミン1

スコポラミン2
スコポラミン3

スコポラミン4

スコポラミン5
(グリーンメディック薬局(大阪府吹田市)の通山さん作成)
--------------------------------------------------------------------------
(図1)
スコポラミン6
 
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  • 2018/11/15 10:32 PM
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