ウェアリング・オフ(パーキンソン病の運動症状)

  • 2013.06.24 Monday
  • 09:00
オフはパーキンソン病の方を診ている在宅医にとって、最も注意しなければならない症状です。
我々の診療域では、単身、高齢者夫婦世帯が多く、オフに対する対処が上手くいかないと、自宅での生活が立ち行かなくなることが多いからです。

パーキンソン病は進行するにつれ運動症状の日内変動が目立つ様になってきます。
wearing-off、on-off、no-on、delayed-onなど、様々なタイプがあります。
当然、本人、家族がそれらの用語を使って説明してくれるわけではないので、こちら側から症状の日ない変動の様子を聞きだして、診断していく必要があります。

私は、ノートに薬剤の内服時刻と調子の良い時間帯を赤で、調子の悪い時を青で塗って貰ってoffのタイミングを知るようにしています。

wearing-off(ウェアリング・オフ)
抗パーキンソン病薬の効果持続時間が短縮し、薬物濃度の変動とともに症状が変動する現象です。L-ドパ製剤を1日3〜4回服用してなお、次の薬剤を服用する前に効果の消退を自覚する場合をwearing-offと呼びます。(※1)
病初期はドパミン神経終末はあまり減少しておらず神経終末でドパミンのre-uptakeが行われ、ドパミン濃度はあまり低下しないためにwearing-offが起こらないと考えられています。
しかしパーキンソン病の進行とともに、ドパミン神経終末が減少しドパミン濃度が維持できなくなるために起こると考えられています。またL-ドパ製剤の半減期が短いために顕在化すると考えられています。
後述するon-offと異なり、offのタイミングが予測しやすく、on-offと比較すれば薬剤の調整は比較的容易です。ただ、高齢であったり罹病期間が長かったり、副作用が強く出たり、薬剤の増量が困難なケースが多いのも現実です。

wearing-offの治療の目的は、
A.off時間の短縮
B.off時の症状改善
です。
後述する多くの治療法は、どちらかのみに効果を発揮するわけではなく、双方に効果を出します。
ただ、統計学的に有意差がどちらかにしか出ていない場合もあります。

wearing-off

wearing-off出現時は、まず投与量不足の可能性を考えます。
 L-ドパを1日3〜4回投与にしていない、あるいはドパミンアゴニストを十分に加えていない場合は、まずこれを行ないます。

 on時に満足のいく効果が出ていない場合には、L-ドパが少ない可能性があります。
 1回量が100mgであれば、1回量を50mgずつ増量してみます。
 私の場合は、1回量が250mgを超えないようにしています。
 幻覚やpeak-doseジスキネジア等の副作用が強い場合には、増量は困難と判断します。

 on時に満足のいく効果が出ている場合には、L-ドパは十分と考えます。
 L-ドパを追加するのですはなく、-aに進むか、ドパミンアゴニストを増量・追加します。
 私の場合は、ミラペックス、ニュープロパッチ、レキップCRのいずれかを追加しています。on時の効果が十分で、これ以上のドパミンの効果を出したくない場合にはニュープロパッチを選択し、もう少しドパミンの効果が出ても良い場合にはミラペックスを選択しています。
 効果が不十分な場合には、他のドパミンアゴニストへの変更を考慮します。
 ドパミンアゴニストの追加・増量は、off時の症状改善を期待して使用する場合が多いです。
 
-a:ジスキネジアがない場合
 L-ドパ1回量を維持し、コムタンを加えます(L-ドパと同時に内服)。
 投与量は、L-ドパ100mgあたり、コムタン100mgとします。
 コムタン併用は、off時間の短縮を期待して使用します。

 ガイドラインでは、エフピー、トレリーフ(ゾニサミド ※2)の併用も選択肢に挙げられています。
 コムタン、エフピー、トレリーフはいずれも作用機序が異なると考えられており、2剤、ないし3剤の併用は可能です。

 ガイドラインにも記載されていますが、トレリーフ50〜100mgを使用するとoff時間は短縮すると考えられています。しかし現在の保険適応は25mgまでなので、使用する際には留意しなければなりません。
 
-b:ジスキネジアがある場合
 ジスキネジアがあったとしても、日常生活に支障がなければジスキネジアがない場合(-a)の治療を行います。
 L-ドパ1回量を減量し、コムタンを加えます(L-ドパと同時に内服)。
 1回量を50mgずつ減量します。onにならなくなった場合やonになったとしても、日常生活に支障が出る場合には減量しすぎです。
 投与量は、L-ドパ100mgあたり、コムタン100mgとします。
 評価は薬剤変更後、3日目以降に行うこととしています。 
 コムタン併用は、off時間の短縮を期待して使用します。

 ガイドラインでは、トレリーフ(ゾニサミド)の併用も選択肢に挙げられています。
 ジスキネジアがある場合には、エフピー併用は使用しないこととされています。
 (offの有無に関わりなく、ジスキネジアがある場合にはエフピーは中止を考慮します。)

: ↓△鮃圓辰討盻淑な効果が得られなかった場合
L-ドパの分割投与(5〜8回/日)を行います。通常L-ドパの1日量は変更しません。
そのため一回量が少なくなり、on時の十分な効果が得られなかったり、内服の時間が一定しなくなり煩雑になるなどの問題もあります。
また、wearing-offはL-ドパの効果持続時間短縮によって起こるものなので、頻回に投与すれば、当初は確実に改善すると考えられていますが、1〜数年後にさらに高度にドパミン神経終末が脱落した場合には、より高度のwearing-offが認められる場合も少なくありません。
このような種々の問題があり、L-ドパの少量頻回投与はwearing-offの改善のための用いられてきた古典的な方法ですが、改善するとのエビデンスはありません。
しかし将来的に問題が起こることを承知した上で、この方法を用いなければならない場合もあります。
(以上、PDガイドラインより、一部改変)

これ以下は、私が実際に行う場合の治療法です。
onが必要な必要な時間以外は、offで良いと考える。
 認知症・病識欠如のために、歩行は可能であるけれども転倒傾向が著しい場合に採用することが多いプランです。
 主として、食事時を中心にonになるように調整します。使用する薬剤はL-ドパが中心になります。
 1回量は、L-ドパ 100mgから開始し、十分な効果が得られるまで、50mgずつ増量します。
 昼・夕は効果が得られるが、朝の効果が不十分な場合には、眠前にドパミンアゴニストの追加を考慮します。
 食事の30〜60分前に大目の水、もしくは粉砕し水に溶かして内服してもらいます。
 薬剤の効果発現が遅延する場合の対処は、delayed-onの項で後述します。
 当然、off時間が長くなりますので、ヘルパーなどによる介護体制を整えることは必須です。

(※1)最近はドパミンアゴニスト単独でもwearing-offが出現し得るとして、次の薬剤を服用する前に効果の減弱を自覚する場合をwearing-offと呼ぶ傾向にあります。

(※2)トレリーフ(ゾニサミド)のパーキンソン病運動症状に対する効果の作用機序は明らかにはなっていませんが、MAO-B阻害、チロシン→ドーパの酵素の合成促進等が考えられています。

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