不安(BPSDの対処法)(140)

  • 2012.11.25 Sunday
  • 08:00
認知症テキストブックでは、「不安・焦燥」としてまとめて取り上げています。
焦燥は通常、英語圏では「agitation」の中に含まれると考えられています。
agitetionは、不穏・興奮とも訳される言葉であり、焦燥は不穏・興奮と分けて考えることは困難な症状と思います。

International Pschogeriatric Associatioでは、不安を「陽性・心理症状」、焦燥を「陽性・行動症状」として取り上げています。

不安とは「漠然とした恐れ」とされています。
軽度の認知症患者では、記憶障害などの中核症状の悪化に対して病識あるいは病感を持ち、不安をいだくことがあります。
財産や自分の健康状態など憂慮するようになり、徐々に日常生活における些細なことにも心配が広がるようになります。
認知症が進行すると、これらの不安を歪曲した形で認識するようになり、焦燥や徘徊などの他の周辺症状の原因となることもあります。

【不安に基づく特徴的な行動症状】
繰り返し
将来の行事や約束について何度も繰り返し訪ねることも、不安による行動症状と考えられています。この「繰り返し」は介護者に精神的な負担になることが多いので、早急に対処することが必要です。

ただし「繰り返し」行動すべてが不安に起因するわけではなく、「繰り返し」を不安に分類するのか。異常行動に分類するのかは個々に判断が必要です。

付きまとい
自分一人が取り残されるのではないかという不安が認められることが多く、一人になるのを異常に怖がるようになる。自宅内にいても家族(介護者)の後をついてまわることになり、さらに悪化した場合は、一人で置いておけずに常に介護者がそばに居る必要が出てくる。

「付きまとい」は徘徊に分類されることもあり、また特定の介護者にのみ付きまとい行為が認められる場合には強い依存心に起因していることもあります。

【病期・基礎疾患による不安の特徴】
参考にしているテキストでは、病期・基礎疾患による差異の記載はありませんでした。
自験例では、13.9%に認めていますが、他のアルツハイマー病の研究(参考)と比較すると少ないです。
基礎疾患別ではFTD(15.0%) > AD(13.5%) > VD(10.0%)でした。
DLB、その他の患者では、不安を認めた症例はありませんでした。

【不安への対処法】
不安の対象を検討し、対策を考えるのですが、定義にあるように「漠然と」していることが多く、不安の対象を明確にすることが出来ない場合が多いです。
なので、安心して生活できる環境をみんなで考えていることを伝えることが必要になります。
他の周辺症状と同様に、説得や注意、無視することは症状を悪化させますので、避けるようにしてください。介護者(家族)が疲れている場合には、無視したり、怒ったりすることがどうしても増えてしまいますので、デイサービスやショートステイの利用を積極的に行い介護者(家族)と離れる時間をつくるような対応が必要です。
慣れない施設でのショートステイは、認知症患者の不安を悪化させ不安を含めた周辺症状が悪化することがありますが、疲れている介護者(家族)に介護されるよりは良い結果がでることがあります。介護保険の上限などの制約がありますが、ショートステイ中に介護者(家族)への認知症に対する教育や自宅での療養環境の再考が必要な場合があります。

【不安への薬物療法
認知症疾患治療ガイドライン2010では、非定型抗精神病薬が選択肢としてあげられています。
以前、アルツハイマー病治療薬によるBPSD治療で記載したようにアリセプト、レミニールはアルツハイマー病患者の不安に有効であったとのデータもあります。
つまりアルツハイマー病治療薬と非定型抗精神病薬が選択肢となります。
認知症の不安に対して、一般的な抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)の使用は限定的に用いなくてはならないとされています。

私の場合は、
時間的余裕が無い場合は、
ベンゾジアゼピン系薬剤と同様の作用機序を持つチエノジアゼピン系薬剤(デパス)を使用することが多いです。理由は使い慣れているからです。
教科書的に推奨されているベンゾジアゼピン系薬剤は、ロラゼパム(ワイパックス)、オキサゼパム、アルプラゾラム(コンスタン等)です。
これらを使い慣れている場合は、これらの薬剤を使用する方が良いと思います。

その後、症状が安定すればセディールに変更していきます。
また時間的余裕がある場合は、セディール(タンドスピロン)から開始します。
セディールは不安以外に抑うつにも有効ですので、抑うつを併発している不安症状には適している薬剤と考えています。
またアリセプト・レミニールの開始・増量も考慮します。
中核症状によって介護に大きな支障が無い場合にはセディールを第一選択にしています。

ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症の周辺症状である「不安」「緊張」「易刺激性」「不眠」等に有効であるが、筋弛緩作用が強く転倒・骨折のリスクが高く、呼吸抑制作用が強いために、少量の非定型抗精神病薬を使用する方が安全と考えられている。

セディールは投与開始から効果出現まで約2週間かかるために、その間はベンゾジアゼピン系薬剤やチエノジアゼピン系薬剤を使用し、その後セディールにスイッチします。

なお、ご紹介頂いた患者さんには少なくない比率でデパスが処方されていますが、認知症の周辺症状に対してデパスが第一選択に来ることはなく、少量の非定型抗精神病薬の使用が推奨されています。
不安に対して、リスパダール、ジプレキサはグレードB、セロクエルはグレードC1です。
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