グループホームにおける認知症診療の実態(4)

  • 2012.11.02 Friday
  • 08:00
【結果4】
アルツハイマー病の診断基準を満たす89例でのアリセプトの使用状況を示す。
 グループホーム入居時に、アリセプトを使用していたのは28例(31.5%)であった。
 使用量は、3mgが4例(14.3%)、5mgが20例(71.4%)、10mgが4例(14.3%)であった。

10mg使用例のうち、1例ではメマリー(20mg)が併用されていた。

 3mg使用群の初回MMSEは8.5±6.8、5mg使用群では7.5±5.0、10mg使用群では14.3±3.9であった。

 (アルツハイマー病の診断基準を満たさないDLB、FTD各1例ずつにアリセプトが使用されていた。)
 (アリセプトを開始したが、その後中止した例は確認できていない。)

・専門医によって診断され、グループホーム入居時まで専門医による診療を受けていた群
 33.3%(6例/18例)

・専門医によって診断されたが、グループホーム入居時には専門医による診療はなく、非専門医により認知症診療を受けていた群
 23.8%(5例/21例)

・専門医の受診歴が無く、グループホーム入居時まで非専門医により認知症診療を受けていた群
 34.0%(5例/21例)

【考察4】
アリセプトの使用頻度は31.5%であった。
多くの例(85.6%)が、添付文書通り5mg、10mgの使用であった。
3mg使用群の4例中、3例では専門医は認知症診療に関与しておらず、非専門医の判断によって3mgの使用を継続していたと考えられる。

同様の調査はなく、評価は出来ないが、未治療群が多い印象がある。

国内の認知症患者数は300万人超と推定されており、うちアルツハイマー病が占める割合も調査によって40〜80%台とバラツキが大きい。
またアリセプト使用者数は、アリセプトの出荷量から90〜100万人と推計されている。
以上の推計値から、国内では少なくとも40%弱のアルツハイマー病患者ではアリセプトが使用されていると考えられる。

グループホーム入所群で、アリセプトの使用頻度が少ないことは、前述したように入居前は独居のケースが多く、家族、介護者が認知症に気付いていない(もしくは気にしていない)可能性を考える。そして独居生活が困難になる程度まで中核・周辺症状が強くなってから、認知症に気付く(気にする)ことになり、認知症そのものの治療を行う前に、介護施設入所を考慮せざるをえない状況に陥っている可能性を考える。

DLBに対して使用していたのは大学病院精神科であり、DLBに対する試用と考えられる。
FTDに対して使用していたのは診療所精神科であり、使用目的は不明である。

専門医の診断を経ていない症例でも、全例AD患者に使用されており、アリセプト発売当時(平成12年)に認められた、認知症患者であれば原因疾患がアルツハイマー病であれその他の疾患であれアリセプトが投与されていたような混乱・誤用は認められなかった。
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