グループホームにおける認知症診療の実態(2)
- 2012.10.22 Monday
- 08:00
【結果1】
対象患者は109人(男性 30人、女性 79人)であった。
初診時の年齢は84.0±6.7歳(平均値±標準偏差)であった。
認知症発症から当院での診療開始までの期間は 4.9±4.4年であった。
認知症発症時期は、家族が患者の認知症に初めて気付いた時期としている。
60人で発症年を同定し、41人で発症月を同定している。7人は発症年を同定できず不明とした。(グループホーム入所前の状況は82.4%が独居、4.6%が配偶者のみの高齢者世帯であり、発症時期は不確実の可能性が高い。)
当院での診療開始当初のMMSEは7.9±7.1であった。
8人が拒否、2人が失語症のために実施できていない。
質問の意味が理解できていない患者、遷延性意識レベル低下の患者は0点としている。
認知症の原因となった疾患は、
・アルツハイマー病(AD) 53人
・前頭側頭型認知症(FTD) 9人
・脳血管性認知症(VD) 7人
・レビー小体型認知症(DLB) 1人
・その他 2人
・AD+VD 21人
・AD+FTD 10人
・AD+その他 3人
・AD+DLB 2人
・DLB+VD 1人
・AD+FTD+VD 1人
・AD+DLB+VD 1人
診断基準は、以下のものを使用している。
本人から病歴を聴取できない場合には、家族・介護スタッフより病歴などを聴取している。
・アルツハイマー病
・前頭側頭型認知症
パーキンソン病の診断・治療が先行したものに関しては、レビー小体型認知症に含めていない。
・脳血管性認知症
また、専門医(精神科医、神経内科医)によって診断された原因疾患に関しては、当院の初診時以降に症状が消失している等の理由で診断が不可能であったとしても、そのまま診断を使用している。
【考察1】
当院では、大阪府豊中市4ヶ所、吹田市1ヶ所のグループホームに入所している利用者の診療を担当している。豊中市の1ヶ所のグループホームでは入居者全員の診療を担当しているが、他4ヶ所のグループホームでは、認知症周辺症状が強い患者やパーキンソン病、癲癇、精神疾患を合併している入居者を中心に診療を担当している。
一般的な認知症疫学調査とは、DLBが極端に少ない点で異なっている。
他の原因疾患の比率に特徴的な点は認められない。
この理由は明確にはなっていない。
アルツハイマー病のみの診断基準を満たす患者は53人(48.6%)であったが、他の原因疾患の診断基準も満たす患者を含めると89人(81.7%)であった。
最近の報告と比較すると48.6%でもやや高い印象を持つが、81.7%は非常に高いと考えられる。加齢に伴いアルツハイマー病や他の原因疾患が複数合併してきている可能性を考える。
MMSEで0点であった患者は32人(29.4%)であった。
1点以上の群と、入所前の環境や原因疾患、周辺症状の頻度ともに差は認められなかった。
0点群は知症発症から当院での診療開始までの期間は 6.3±3.5年であり、自宅やその他の施設での療養期間が長かったために、1点以上の群と比較して認知症中核症状が進行していると考えられ、特徴的なものではなかった。
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