グループホームにおける認知症診療の実態(1)
- 2012.10.21 Sunday
- 08:00
【目的】
介護施設での在宅医療を考える(1) で述べたように、全国的に見て大阪府は独居高齢者が多い地域である。認知症が軽度である間は、家族が近隣に居住している場合には家族が通って生活援助を行ったり、介護保険での種々のサービスを利用しながら独居生活を維持することは可能である。しかし認知症が進行するれば独居生活を維持することは困難となり、家族との同居や介護施設への入所を行わざるをえない。
また「認知症高齢者数について」に記載されているように平成24年の推計では認知症高齢者300万人を超えている。
一方、認知症に関する専門医数は、スライド(「今後の認知症施策の方向性について」の反論より)に示すように2000人を超えない。
(重複して専門医登録している医師もいるため実数の把握は困難。)
つまり、現在も多くの認知症高齢者はグループホームははじめとした介護施設に入所しており、この数は今後も増加すると考えられている。その数と比して専門医の数は少なく、介護施設入所者の認知症診療の全てを担当することは事実上、不可能である。
多くの介護施設では、内科診療を中心に診療所医師が関わりを持っている。
平成21年度に、大阪府豊中市のグループホーム(当時25ヶ所あり21ヶ所より回答を得ている)を対象に実施した当院の実施した調査では、21ヶ所中20ヶ所では、診療所からの訪問診療を受けていたが、訪問医が認知症診療を行っていたのは6ヶ所のグループホームのみであった。残りのグループホームでは周辺症状が増悪した場合に、近隣の精神科病院を受診することで対応していた。
以上のことから、介護施設で内科的診療に携わっている内科系診療所医師に周辺症状コントロールを中心とした認知症診療を行う必要があり、そのためには認知症診療に対する研修が必要であると考えている。
そのために、当院で診療を行なっているグループホーム入所中の患者を対象に認知症診療の実態調査を行うこととした。
【方法】
当院で平成20年4月1日から平成24年3月31日までに診療を開始したグループホーム入居者を対象とした。
調査期間は平成20年4月1日から平成24年9月30日までとしている。
調査項目は、以下の通り。
・診療開始時の年齢
・性別
・認知症の原因となった疾患
・認知症発症から当院での診療開始までの期間
・専門医による診断の有無
・グループホーム入所直前に診療を受けていた医療機関(診療科)
・当院での診療開始当初のMMSE(入所後3〜4週間目に実施)
・当院初診までに認められた周辺症状
・グループホーム入所時の薬物療法の内容(中核症状・周辺症状)
・当院で行った認知症に対する薬物療法の内容(中核症状・周辺症状)
・当院の診療中に認めた周辺症状
・転帰
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