不穏・興奮(BPSDの対処法)(123)

  • 2012.10.16 Tuesday
  • 08:00
不穏・興奮ともに定義しにくい項目です。
英語圏では「agitation」という用語が用いられることが多いですが、日本では「不穏(症状)」が最もよく使われている印象があります。
認知症疾患治療ガイドライン2010では、焦燥性興奮という用語が用いられており、「その人の要求や意識障害の錯乱によって生じたとは考えられない不適当な言語、音声、運動上の行動をとること」とされています。

一方、認知症テキストブック不穏は「穏やかでないこと、落ち着かない状態」を意味しますが、明確に定義することは困難と記載されています。
興奮は「一般的に気持ちが高ぶり、抑えられなくなる」ことと記載されています。

Behave-ADでは、不穏は攻撃性の一項目として取り上げられています。

認知症を専門にされていない医師からご紹介いただいた患者さんの紹介状では「不穏」という用語を用いられていることが多いのですが、「陽性・心理症状」全般を「不穏」と表現されている印象を持っています。

以上のように、「不穏」「興奮」は明確に定義づけされておらず、混同して使用されている印象のある用語です。

【病期・基礎疾患による不穏・興奮の特徴】
中等度の認知機能障害がある患者では頻繁に認められます。
 アルツハイマー病では、進行しアパシーを認めるような時期にはほぼ消失します。
基礎疾患による頻度の違いは不明です(論文を見つけられていません)。
自験例では、FTD(65%) > DLB(50%) > VD (40%) > AD(25%)でした。

【不穏・興奮への対処法】
 ・すべての「不穏・興奮症状」に医学的介入が必要なわけではありません。
 ・「不穏・興奮症状」の理由を明らかにし、適切な社会的・環境的・行動的介入を行い誘因を解消する必要があります。

  理由を明らかにするために、不穏・興奮症状になる
  ・時間
  ・人
  ・その他
  を注意して見ていく必要があります。

 [時間]
  ・一日のうち、短時間のみ「不穏・興奮症状」を認めるのか?、
   ほぼ一日を通して「不穏・興奮症状」を認めているのか?が観察の第一歩です。
   短時間の場合には、特定の時間や環境はないかを確認する必要があります。
   日単位や2週間周期で「不穏・興奮症状」の増悪・軽快を認める場合もあります。
 [人]
  ・「不穏・興奮症状」を認める場合に、特定の人が周りにいないかを確認する必要があります。仲の悪い、嫌いな人だけが誘因になるわけではなく、仲の良い、好きな人が誘因となることもあります。
  ・また特定の人が居なくなった場合でも「不穏・興奮症状」を認めることもあります。
   特に介護施設では、家族の面会後に「不穏・興奮症状」を認めることが多いです。
 [その他]
  ・日単位で変動する「不穏・興奮症状」の場合は、排便状況を確認する必要があります。便秘を引き金に増悪することが多く認められます。
  ・2週間程度の周期で増悪・軽快する場合には、レビー小体病(パーキンソン病、レビー小体型認知症)の合併を念頭に置き、パーキンソン病運動症状の有無を確認する必要があります。
  ・視力、聴力など感覚の低下により「不穏・興奮症状」の増悪を認めることがありますので、感覚器の評価を行う必要があります。  

介護的ケアでは
・「安心させる穏やかな口調で話をする」「目的をわかりやすく語りかけ患者を驚かせない」など認知症患者全般にいえる対応は必要です。
・誘因となっている状況や人から、患者を引き離すことが必要です。
  特に介護施設入所直後は、家族の面会後に不穏・興奮症状が増悪することが多いので、家族の面会を控えて貰うことも必要になります。
  便秘を誘因としている場合には、排便コントロールが必要です。

不穏・興奮症状への薬物療法
適切な社会的・環境的・行動的介入を行っても症状が、期待しているレベルまで改善しない場合には薬物療法を行います。

・比較的中核症状が軽度である場合、感覚障害を誘因としている場合には、コリンエステラーゼ阻害薬の投与を考慮します。
 アリセプト(ドネペジル)は、不穏・興奮症状を増悪させる可能性があるので、レミニール(ガランタミン)投与を第一に考えます。
 またメマリー(メマンチン)は前述したように不穏・興奮症状に有効とされていますので、第一選択としても良いのですが、本邦では重症例に対してアリセプトもしくはレミニール、イクセロン・リバスタッチ(リバスチグミン)と併用することが原則ですので、単独では第一選択としづらい事情があります。
すでにアリセプトやレミニールが投与されている場合にはメマリー追加を第一選択に考えても良いと思っています。
また、前述したようにアリセプトの副作用として不穏・興奮症状を認めることがありますので、アリセプトが投与されている場合には減量・中止も考慮する必要があります。

・ほぼ一日を通して「不穏・興奮症状」を認めている場合には、
 抗精神病薬(リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、エビリファイ)、抑肝散の投与を考慮します。
 個人的には(症状:弱) 抑肝散 → セロクエル → リスパダール (症状:強)でコントロールしています。

・一日のうち短時間だけ不穏・興奮症状を認める場合には、
 気分安定薬(抗てんかん薬)投与を第一選択としています。
 認知症疾患治療ガイドライン2010では、テグレトール(カルバマゼピン)、デパケン(バルプロ酸)が有効であったとの記載があります。
 しかし近隣の精神科病院、認知症センターからの紹介患者ではエクセグラン(ゾニサミド)が多く使用されています。
 当院の経験でも、ある意味、発作的な「不穏・興奮」に関して有効である印象があります。

抗精神病薬や抗てんかん薬は抑制系薬剤であり、意識レベル低下や転倒傾向の増悪などの副作用を持ちますので、使用の際にはリスクとベネフィットを計りにかける必要があります。
またこれらの薬剤は、譫妄の原因となる場合があり一見、「不穏・興奮症状」が悪化したように見えることもありますので、正しく評価してください。

但し、リスパダール(リスペリドン)とセレネース(ハロペリドール)は、平成23年09月の厚生労働省保険局医療課長通知「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(保医発0928第1号)」によって、「当該使用事例を審査上認める」とされています。

(※)当院の認知症診療は中等度・重度の患者が中心であり、その経験に基づいて記載しております。そのために教科書的な比率等と異なる場合がありますので、成書もご確認ください。
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