ALS患者に対するラジカット(エダラボン)療法

  • 2015.09.27 Sunday
  • 18:13
平成27年6月26日、脳梗塞の治療薬として使用されてきたラジカット(エダラボン)がALSに対して効能追加されました。

用量・用法は田辺三菱製薬のHP ラジカット(エダラボン)を参照してください。

最近、近隣の在宅医よりラジカット導入を依頼されるケースが何件かありましたので、
実施にあたって、注意すべき点を書き連ねていきたいと思います。
治験で効果が明らかであったのは、
―転錨拱類 1もしくは2(下記)
発症から2年以内
%FVC 80%以上
ALSFRS-R すべての項目が2点以上
E
l Escorial診断基準でdefiniteもしくはprobable
のすべてを満たしている群のみです。

また重症度「2」よりは「1」、発症から「1〜2年」よりは「1年未満」がより効果が高かったとされています。
しかし、今回の適応では重症度などによる使用制限はかけられておらず、すべてのALS患者に使用できることにはなっています。

なので、上記に当てはまらないALS患者に使用する場合、開始前には
「効果がはっきりしていない(ただし、評価されていないので効かないという証拠もない)」
「長期使用例がないので、長期的には効果があるかどうかわからない(これは、これに効果が認められた群も同様)」
「○○の時期になれば、中止する必要がある」
等を説明しておく必要があると考えています。

また、投与方法がすこし変わっているので、2週間のうち10日間、1日1回、1回1時間程度、点滴のために外来通院もしくは訪問診療・訪問看護を受ける必要があります。
つまり、針を刺される、活動が制限されるなどのデメリットもあるので、患者、主治医(神経内科医、かかりつけ医)でよく相談の上、開始を決定する必要があると考えています。

私は、「上記の群に入らなくても、患者の希望があればラジカットを使用する」予定にしています。
ただし、データがない群ですので、データ収集し、効果を検証していくつもりです。

他の在宅医の先生が診療にあたっている患者さんでも、定期的にレスパイトケア入院して頂けるのであれば、導入を含めて、ご相談させていただきます。

(重症度分類)
1. 家事・就労はおおむね可能
2. 家事・就労は困難だが、日常生活(身の回りのこと)はおおむね自立
3. 自力で食事、排泄、移動のいずれか一つ以上ができず、日常生活に介助を要する
4. 呼吸困難・痰の喀出困難、あるいは嚥下障害がある
5. 気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸器使用





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NPPVは生命予後を延長するか?

  • 2014.05.28 Wednesday
  • 08:00
2000年頃までは、NPPVを使用しても生命予後は延長しないとの報告が多かったのですが、徐々に生命予後が延長するとの報告が増加してきました。
当院も、平成22年に日本神経学会総会で、約15か月間延長するとの報告を「NPPVを用いたALSの在宅医療(第二報)」内で行っております。

昨年11月に大阪で開催された日本難病医療ネットワーク学会で発表した演題
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のNPPV導入前に我々は何を伝えるべきか?」内で使用したデータをまとめなおしました。
NPPVの有無

発表時より症例数は増加しています。
NPPVからTPPVを導入したのは15例、NPPVを使用しない状況からTPPVへ移行したのは16例でしたので、前回記載した「TPPV導入した方がエンドポイントは短くなる」ことの影響はないこととしました。

中央値、平均値ともに約20か月延長すると考えました。

ALSの観察期間調査におけるエンドポイント

  • 2014.05.25 Sunday
  • 08:00
種々の調査ではALSのエンドポイントは通常、「死亡」もしくは「TPPV導入」とされています。
これまで、あまり疑問に思っていなかったのだけれど最近、罹病期間の調査をするようになって、
エンドポイントを「死亡」「TPPV導入」にした場合、「TPPV導入」群の方が観察期間が短い印象を持っていました。

TPPV導入は、事故的に挿管・人工呼吸管理を開始する場合を除けば、当然「死亡」する前に導入するわけですから、「TPPV導入」群の方が観察期間が短くなります。
どの程度の差があるのか、評価をしてみました。

いつものように、対象は当院で診療を行ったALSの方 128人です。観察期間が300ヶ月を超えている2例は除外しています。
TPPV(+)群は31人、TPPV(-)群は97人です。

エンドポイント
TPPV(+)群の方が20ヶ月近く短い結果となりました。
TPPVを安全な時期に導入しようとすればするほど、「TPPV導入」をエンドポイントにすれば、観察期間は短くなると考えられ、TPPVを導入したALSケースの比率によって観察期間の評価が変わる可能性を考えます。

「ALSの観察期間調査におけるエンドポイント」に関する文献を探しているのですが、見つけられていません。
どなたかご存知の方はいらっしゃいませんでしょうか?
また同じような結果をお持ちの方がいらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか?

ALSのTPPV期間に影響を与えるものは何か?(2)

  • 2014.04.15 Tuesday
  • 06:15
前回に引き続きALSのTPPV期間に何が影響を与えているのかを考えてみることにしました。
これも経験から、
Mechanically assisted coughing(MAC、カフアシスト
)の登場以降、肺炎の頻度が減少している。これまで治らないと思っている肺炎も治るようになっている。その結果、カフアシストを使用するとTPPV期間は延長する」との仮説を持っております。

導入時期や使用方法の相違は問わず、カフアシストを利用しているか否かでグループ分けをしてみました。
対象は、これまでと同様に当院で訪問診療を行ったTPPVを導入したALS 30例です。
当院は原則的にALSのTPPV導入例にはカフアシストを使用していますが、診療報酬適応前に終了したケースや、実施者が確保できなかったケース、本人・家族が使用に同意しなかったケースが、使用していないケースになります。

在宅でのカフアシスト
の使用目的は、排痰のためというよりは、胸郭の柔軟性を保つために使用しています。

カフアシスト
を使用したケースは20例、使用しなかったケースは10例です。

カフアシストの有無


今回の結果は、有意差がありカフアシストを使用したほうがTPPV期間が長い結果でした。

次回以降で、
・これまでのカフアシストでは、使用している設定では有効なPeak Cough
 Flow(PCF)が確保できているか否かが評価できませんでしたが、E70(http://www.respironics.philips.co.jp/healthcare/product/product_detail.html?pid=116)が登場してから、PCFや換気量が評価できるようになったので、これまで用いていた設定は有効であったのか否かを評価する。
・カフアシスト使用の有無で、呼吸器感染症の頻度が異なるのか。
・ALSのTPPVの死亡原因は何か?
を評価していく予定にしています。

開示すべきCOI関係にある 企業などはありません」というか、利益提供を受けるほど影響力を持っていません。

ALSのTPPV期間に影響を与えるものは何か?(1)

  • 2014.04.14 Monday
  • 07:00
前回の記事(ALSにおいて気管切開・人工呼吸管理はどの程度の期間になるのか。)で、これまでの報告よりもTPPV期間が長期間に渡る可能性が出てきています。

これまでも当院が罹病期間などの「期間」を調査した場合、これまでの報告より長くなる傾向にあります。
それは既存の報告の多くが、専門病院や一般病院から行われています。
専門病院・一般病院と当院を比べると、
・在宅医療開始までに死亡してしまったケース(短期例)が、当院のデータに反映されない
・専門病院・一般病院では死亡まで追跡することが困難で、長期例が専門病院・一般病院に反映されない
ためと考えています。

ALSのTPPV期間に何が影響を与えているのかを考えてみることにしました。

これまでの経験から、
「TPPV導入直後に、ファイティング等のために気道内圧の高いタイミングのあるケースは、徐々にPIP(peak inspiratory pressure)が上昇し、圧損傷(barotrauma)の原因となりえ、その結果、生命予後が短縮する」との仮説を持っております。

まず単純に、TPPV導入前にNPPVを使用していたか否かでグループ分けをしてみました。
対象は、これまでと同様に当院で訪問診療を行ったTPPVを導入したALS 30例です。
NPPVの有無

TPPV導入前にNPPVを使用していたケースの方が、平均値・中央値ともにNPPVを使用していなかったケースよりも長いTPPV期間を持っているのですが、症例数が少ないこともあり、有意差は出ていません。
しかし、TPPV導入前にはNPPVを導入して、呼吸機能がある程度以上に障害されてからTPPVに変更した方が良さそうだとは思えるデータでした。
TPPV導入前の%FVCで評価したかったのですが、前医でTPPVが導入されているケースのデータがない・入手出来ない場合が多すぎて、残念ながら評価が出来ませんでした。
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スコポラミン軟膏

  • 2013.12.02 Monday
  • 10:01
黒字は一般的な内容、赤字は当院(神経内科クリニック)での対応や考え方を記しています。

【はじめに】
唾液はパーキンソン病やパーキンソン症候群では分泌過多となり、脳卒中や ALS など球麻痺を伴い自然に飲み込むことができなくなる疾患でも結果的に増加します。
誤嚥を認める場合には、唾液増加は喀痰量増加の原因となり、呼吸筋麻痺があり咳嗽が弱くなっている場合には痰の喀出困難は困難になります。
そのため唾液増加は喀痰量増加や喀出困難は呼吸苦に直結します。
また球麻痺を伴う場合には、唾液過多は喀痰吸引を頻回に行わなければならないという介護面での問題にも直結します。
嚥下機能の回復のために嚥下リハビリテーションや、パーキンソン病薬の投薬調整などを行いますが、それでも問題が解決しないときには唾液量を減少させることを試みます。
唾液減少を副作用に持つ抗コリン剤や抗ヒスタミン剤の内服薬の使用も考慮しますが、効果が不十分であったり、他の作用のために使用できない場合も少なくありません。
そのような場合にはスコポラミン軟膏の使用を考慮します。
しかしスコポラミン軟膏は薬事収載薬ではないために、後述する理由から研究目的でしか利用できないと考えています。

【適応】
・唾液量の増加や流涎によるトラブルがあるが、他の方法で、そのトラブルを解決できないケース
・スコポラミン使用の禁忌ではないケース
・スコポラミン軟膏の使用を本人(本人が意思表出が困難な場合は主介護者)が了解したケース

【スコポラミン軟膏を使用する時の手順】
(A:医療機関としての準備)
Step 1:医療機関でスコポラミン軟膏を使用することを決定します。
 スコポラミン軟膏はこれまでの研究で、唾液過多による諸症状を緩和すること可能であることが知られています。
 また重大な副作用の頻度は低いとされており、多くのALS診療ガイドラインを含め種々のガイドラインにも記載されています。
 しかしスコポラミンは薬事収載薬ではないため、各医療機関において適切な対応が必要です。
 当法人では、平成22年度に院内での話し合いを行い、スコポラミン軟膏の使用を決定しています。
 医師一人の診療所では、その医師の判断によると思います。
 
Step 2:スコポラミン軟膏を確保します。
 現状では薬剤として認められていないため国内の販売はなく、あくまで研究という立場で個々の医療機関内で調剤して対応するしかありません。
 (海外では吐気止めとしてパッチ剤が販売されています)。
 つまり「自院内で作成する」か「作成してくれる薬局を見つけ、作成してもらう」ことになります。
 また通常の調剤薬局での対応は困難です。
 当法人では、懇意にしている調剤薬局に依頼し作成して頂いています。
 このStepが最も超えにくいハードルと考えています。
 当院では大阪府豊中市にあるグリーンメディック薬局に作成を依頼しております。
 (なお、グリーンメディック薬局では、患者さん・ご家族さんからの直接のご紹介にはお答えされておりません。
 医療機関からのご連絡をお願いします。
)
 
(B:患者に使用する前の準備)
Step 3:患者・家族にスコポラミン軟膏使用の説明を行います。
 当法人では、文書を用いて以下の内容を説明しています。(別紙1)
 (この説明は、あくまでも当法人内で決定したものであって、他者によって検証されたものではありません。) 
 ・使用目的
 ・使用方法
 ・予想される効果と副作用
 ・スコポラミン軟膏以外の治療方法
 ・試薬であることの説明
 ・臨床研究として実施すること
 ・費用負担
 ・連絡先
  (承諾書・同意書等の文書を作成するか否かは、各医療機関ごとで対応を決めます。)
 
Step 4:スコポラミン軟膏の作成
 スコポラミン臭化水素酸塩三水和物 1 gを親水性軟膏 20 g を用いて 約5%スコポラミン軟膏を作成します。(スライド1〜5)
 当法人では、スコポラミン臭化水素酸塩三水和物を少量の流動パラフィンで溶かし、白色ワセリン20gを用いて作成しています。
 前述したように、調剤薬局に依頼し作成していただいております。
 スコポラミンは常備されている試薬ではないので、発注してから手元に届くまで1週間程度かかります。
 当法人では5gずつ軟膏容器に分けて、患者に渡しています。
 (作成の手順は、スライドに示します。)
 
(C:スコポラミン軟膏の使用方法と効果の評価)
Step 5:スコポラミン軟膏の貼付
 5%スコポラミン軟膏を調剤し、約 0.1〜0.5g 程度をカットバンに綿棒等を用いて塗布し、両耳介後部の乳様突起付近に貼付します。(図1)
 当法人では、少量(目分量)のスコポラミン軟膏をカットバンに塗布し、片側の両耳介後部の乳様突起付近に貼付することから開始します。
 理由は効果には個人差が大きいためです。女性は口渇を訴える方が多い印象があります。
 また開始量で強い口渇感が出た場合には、使用継続に拒否的な反応を示す患者さんも少なくないので少量から開始することにしています。
 効果が乏しい場合には、増量します(両側に貼る)。
 交換日が分かるように、カットバンには日付を記入します。
 
Step 6:スコポラミン軟膏の効果の評価
 効果判定は、唾液の減少で行うことになりますが、唾液量を直接的に測定し評価することは困難です。
 ALSなどの意思表出が可能なケースでは、本人の自覚症状を評価スケールに使用します。
 意思表出が困難なケースでは、主介護者の介護負担を評価スケールに使用します。
 唾液が減少したとしても、口渇や唾液の粘り気が強くなることで、評価が低くなることがあります。
 当法人では、本人・家族に全般的な評価を行って頂くために、NRS(Numeric Rating Scale)を使用しています。
  
Step 7:スコポラミン軟膏の交換頻度
 これまでの使用経験から、スコポラミン軟膏の効果は個人差が大きいと考えています。
 初回にスコポラミン軟膏を使用する時に、効果の持続時間を評価します。
 交換頻度は1〜7日に1回程度としています。当法人の使用経験から3日ごとに交換する場合が多いです。
 これまでの研究でも、確立した使用方法はありません。
 
【費用】
スコポラミン軟膏作成には、「原料費」+「手技料」の費用が必要です。
スコポラミン臭化水素酸塩三水和物は1g=6700円、10g=34900円と高額です。
(参考:東京化成工業株式会社 http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/S0021/)
流動パラフィン(1250〜3000円/500mL)やワセリン(1000円前後/500g)、軟膏壺(10mL、10円未満/個)の価格は特に問題にする必要はないぐらい低額です。
一般的な使用量は、0.2〜1.0g/3日です。つまり20gのスコポラミン軟膏は、60〜300日分に相当します。
スコポラミン軟膏を使用する対象者が少ない場合には、軟膏を20g(スコポラミンとして1g)ずつ作成することになります。
5%スコポラミン軟膏20gを作成するためには、原料費だけで7000円弱の費用が必要です。
手技料に関しては、院内で作成する場合には問題になりませんが、調剤薬局に依頼する場合には協議の上、決定する必要があります。

【費用負担に関する考え方
スコポラミン軟膏によって唾液を減らす行為は、保険外診療と考えられます。
厚生労働省の考えでは、「保険診療と保険外診療の併用は原則として禁止しており、全体について、自由診療として整理される。」とされています。
またクリニックがすべての患者に無償でスコポラミン軟膏を渡すことは、ダンピング診療と判断される可能性もあります。
そのため医療機関はスコポラミン軟膏を使用する際には、臨床研究と位置づける必要があると考えられます。
その場合、費用は医療機関の負担になります。
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(別紙1)
スコポラミン0
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(別紙1テキスト)

スコポラミン軟膏の使用について
 
1. 使用目的】
あなたの病気の進行にともない、唾液の飲み込みが悪くなり流涎の症状が出現します。
 
今回使用する薬品について 
スコポラミンという薬剤は抗コリン作用をもち、検査前のお腹の動きを止めたり
痛みをとめたりする薬と同じ成分です。国内では、医療用の医薬品としてではなく
試薬として取り扱われています。
 
今回使用を行なうに至った経緯と投与の必要性
抗コリン作用を有し、耳下腺に対して唾液の分泌を抑える働きが期待できるため
症状の軽減のためこの薬剤の使用を考えています。
当クリニックではこの薬剤の効果で、同じような症状を持つ患者さんの苦痛が軽減される
ことをめざして、臨床研究を行うことにしておりこの研究にご協力いただければありがたいと考えています。
 
2. 使用方法】
5%スコポラミン軟膏0.1gをカットバンに塗布し、両耳介後部乳用突起部に貼付します。
13日に1回張り替えます。
 
3. 予想される効果】
唾液の分泌が少なくなり、流涎の症状が改善することが期待できます。
そのため唾液の垂れ込みによる誤嚥性肺炎の予防や吸引回数の減少が期待できます。
 
4. 予想される副作用】
口渇、悪心、嘔吐、発汗減少、尿閉、便秘、目の調節障害、眠気、発疹があります。
軟膏使用前の状態を著しく逸脱する範囲で出現した場合は中止する必要があります。
副作用が出た場合は、他の薬物と同様に保険診療の範囲内で適切な治療を行ないます。
 
5. あなたの症状に対する他の治療法について】
三環系抗うつ薬や、トリへキシフェ二ジル塩酸塩などの抗コリン作用を持つ薬の使用。
唾液専用低圧持続吸引器による持続吸引
などがあります。
 
6. 薬代等の費用負担について】
当クリニックで全額負担いたします。

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(スライド1〜5)
スコポラミン1

スコポラミン2
スコポラミン3

スコポラミン4

スコポラミン5
(グリーンメディック薬局(大阪府吹田市)の通山さん作成)
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(図1)
スコポラミン6
 

ALSでのモルヒネ導入法(プロトコール)

  • 2013.08.19 Monday
  • 08:00
 【適応】呼吸苦、身の置き所のなさ、痛み
 ・それぞれの原因検索がまず行なわれるべきである。
  感染症など、他に原因がある場合はその対処を行なう。
 ・必ずしもモルヒネの投与が最適とは限らない。他の緩和ケアの手を尽くしても苦痛が緩和できない場合には薬物療法も考える。
 ・症状によっては抗うつ剤、メジャートランキライザーなどの他の薬物療法が良い場合もある。

モルヒネ1
モルヒネ2

ウェアリング・オフ(パーキンソン病の運動症状)

  • 2013.06.24 Monday
  • 09:00
オフはパーキンソン病の方を診ている在宅医にとって、最も注意しなければならない症状です。
我々の診療域では、単身、高齢者夫婦世帯が多く、オフに対する対処が上手くいかないと、自宅での生活が立ち行かなくなることが多いからです。

パーキンソン病は進行するにつれ運動症状の日内変動が目立つ様になってきます。
wearing-off、on-off、no-on、delayed-onなど、様々なタイプがあります。
当然、本人、家族がそれらの用語を使って説明してくれるわけではないので、こちら側から症状の日ない変動の様子を聞きだして、診断していく必要があります。

私は、ノートに薬剤の内服時刻と調子の良い時間帯を赤で、調子の悪い時を青で塗って貰ってoffのタイミングを知るようにしています。

wearing-off(ウェアリング・オフ)
抗パーキンソン病薬の効果持続時間が短縮し、薬物濃度の変動とともに症状が変動する現象です。L-ドパ製剤を1日3〜4回服用してなお、次の薬剤を服用する前に効果の消退を自覚する場合をwearing-offと呼びます。(※1)
病初期はドパミン神経終末はあまり減少しておらず神経終末でドパミンのre-uptakeが行われ、ドパミン濃度はあまり低下しないためにwearing-offが起こらないと考えられています。
しかしパーキンソン病の進行とともに、ドパミン神経終末が減少しドパミン濃度が維持できなくなるために起こると考えられています。またL-ドパ製剤の半減期が短いために顕在化すると考えられています。
後述するon-offと異なり、offのタイミングが予測しやすく、on-offと比較すれば薬剤の調整は比較的容易です。ただ、高齢であったり罹病期間が長かったり、副作用が強く出たり、薬剤の増量が困難なケースが多いのも現実です。

wearing-offの治療の目的は、
A.off時間の短縮
B.off時の症状改善
です。
後述する多くの治療法は、どちらかのみに効果を発揮するわけではなく、双方に効果を出します。
ただ、統計学的に有意差がどちらかにしか出ていない場合もあります。

wearing-off

wearing-off出現時は、まず投与量不足の可能性を考えます。
 L-ドパを1日3〜4回投与にしていない、あるいはドパミンアゴニストを十分に加えていない場合は、まずこれを行ないます。

 on時に満足のいく効果が出ていない場合には、L-ドパが少ない可能性があります。
 1回量が100mgであれば、1回量を50mgずつ増量してみます。
 私の場合は、1回量が250mgを超えないようにしています。
 幻覚やpeak-doseジスキネジア等の副作用が強い場合には、増量は困難と判断します。

 on時に満足のいく効果が出ている場合には、L-ドパは十分と考えます。
 L-ドパを追加するのですはなく、-aに進むか、ドパミンアゴニストを増量・追加します。
 私の場合は、ミラペックス、ニュープロパッチ、レキップCRのいずれかを追加しています。on時の効果が十分で、これ以上のドパミンの効果を出したくない場合にはニュープロパッチを選択し、もう少しドパミンの効果が出ても良い場合にはミラペックスを選択しています。
 効果が不十分な場合には、他のドパミンアゴニストへの変更を考慮します。
 ドパミンアゴニストの追加・増量は、off時の症状改善を期待して使用する場合が多いです。
 
-a:ジスキネジアがない場合
 L-ドパ1回量を維持し、コムタンを加えます(L-ドパと同時に内服)。
 投与量は、L-ドパ100mgあたり、コムタン100mgとします。
 コムタン併用は、off時間の短縮を期待して使用します。

 ガイドラインでは、エフピー、トレリーフ(ゾニサミド ※2)の併用も選択肢に挙げられています。
 コムタン、エフピー、トレリーフはいずれも作用機序が異なると考えられており、2剤、ないし3剤の併用は可能です。

 ガイドラインにも記載されていますが、トレリーフ50〜100mgを使用するとoff時間は短縮すると考えられています。しかし現在の保険適応は25mgまでなので、使用する際には留意しなければなりません。
 
-b:ジスキネジアがある場合
 ジスキネジアがあったとしても、日常生活に支障がなければジスキネジアがない場合(-a)の治療を行います。
 L-ドパ1回量を減量し、コムタンを加えます(L-ドパと同時に内服)。
 1回量を50mgずつ減量します。onにならなくなった場合やonになったとしても、日常生活に支障が出る場合には減量しすぎです。
 投与量は、L-ドパ100mgあたり、コムタン100mgとします。
 評価は薬剤変更後、3日目以降に行うこととしています。 
 コムタン併用は、off時間の短縮を期待して使用します。

 ガイドラインでは、トレリーフ(ゾニサミド)の併用も選択肢に挙げられています。
 ジスキネジアがある場合には、エフピー併用は使用しないこととされています。
 (offの有無に関わりなく、ジスキネジアがある場合にはエフピーは中止を考慮します。)

: ↓△鮃圓辰討盻淑な効果が得られなかった場合
L-ドパの分割投与(5〜8回/日)を行います。通常L-ドパの1日量は変更しません。
そのため一回量が少なくなり、on時の十分な効果が得られなかったり、内服の時間が一定しなくなり煩雑になるなどの問題もあります。
また、wearing-offはL-ドパの効果持続時間短縮によって起こるものなので、頻回に投与すれば、当初は確実に改善すると考えられていますが、1〜数年後にさらに高度にドパミン神経終末が脱落した場合には、より高度のwearing-offが認められる場合も少なくありません。
このような種々の問題があり、L-ドパの少量頻回投与はwearing-offの改善のための用いられてきた古典的な方法ですが、改善するとのエビデンスはありません。
しかし将来的に問題が起こることを承知した上で、この方法を用いなければならない場合もあります。
(以上、PDガイドラインより、一部改変)

これ以下は、私が実際に行う場合の治療法です。
onが必要な必要な時間以外は、offで良いと考える。
 認知症・病識欠如のために、歩行は可能であるけれども転倒傾向が著しい場合に採用することが多いプランです。
 主として、食事時を中心にonになるように調整します。使用する薬剤はL-ドパが中心になります。
 1回量は、L-ドパ 100mgから開始し、十分な効果が得られるまで、50mgずつ増量します。
 昼・夕は効果が得られるが、朝の効果が不十分な場合には、眠前にドパミンアゴニストの追加を考慮します。
 食事の30〜60分前に大目の水、もしくは粉砕し水に溶かして内服してもらいます。
 薬剤の効果発現が遅延する場合の対処は、delayed-onの項で後述します。
 当然、off時間が長くなりますので、ヘルパーなどによる介護体制を整えることは必須です。

(※1)最近はドパミンアゴニスト単独でもwearing-offが出現し得るとして、次の薬剤を服用する前に効果の減弱を自覚する場合をwearing-offと呼ぶ傾向にあります。

(※2)トレリーフ(ゾニサミド)のパーキンソン病運動症状に対する効果の作用機序は明らかにはなっていませんが、MAO-B阻害、チロシン→ドーパの酵素の合成促進等が考えられています。

ジスキネジア(パーキンソン病の運動症状)

  • 2013.05.27 Monday
  • 08:00
「オフ・ピリオド・ジストニア」に続く、二回目は「ジスキネジア」です。

「ジスキネジア」やら「ジストニア」やらよく似た言葉が出てきて、混乱してしまいます。

ジスキネジア(dyskinesia)は[dys(異常)]と[kinesia(運動)]に分解され、ジストニア(dystonia)は[dys(異常)]と「tonia(緊張)]に分解されます。

以下はPDガイドラインよりの引用です。
『L-ドパ誘発性ジスキネジアにはpeak-doseジスキネジアとdiphasicジスキネジアとがある。いずれも進行期で症状の変動が明らかとなる時期に認められるようになり、L-ドパ治療4〜6年で36%程度に発症する。
diphasicジスキネジアはpeak-doseジスキネジアに比べると頻度は低い。』

進行期のパーキンソン病の方ではジスキネジアは良く認められる症状です。
しかし本人、ご家族が「ジスキネジアです」と言ってくれるわけではありません。
ジスキネジアは薬剤の影響で出現することが多いので、決まった時間帯に出現することが多くなります。そのため診察時に、出現していないことも多いため、多くは家族へのインタビューで判断しなければならないこともあります。(最近は携帯電話に動画撮影機能が付いていますので、動画で確認出来る場合が増えてきており、診断が容易になってきています。)
本人、ご家族は「(安静時)振戦」を「振るえ」と表現されることが少なくありません。そして「ジスキネジア」も「振るえ」と表現されることがあります。
医師は「振戦に対して抗パーキンソン病薬」を処方し、振戦が軽快することを期待しているのですが、本人・ご家族からは「薬が増えてから、振るえが酷くなった」と言われることがありますが、多くの場合は「振戦(振るえ)は消失したが、(peak-dose)ジスキネジア(振るえ)が酷くなった」の場合と考えられます。

まず、どの様な運動であるのか
・ご家族に真似をしてもらう
・動画を撮影してもらう
・医師が「振戦」「ジスキネジア」の真似をして、どちらに近いか判断してもらう
・「振戦」「ジスキネジア」の動画を見てもらい、どちらに近いか判断してもらう
などで、評価を行ないます。

peak-doseジスキネジア
『パーキンソニズムのon時に現れ、L-ドパ血中濃度の高い時に一致する。
顔面、舌、頚部、四肢、体幹に舞踏運動として現れる。
粗大に上下肢を動かすバリスム様であったり、ジストニア様の異常姿勢が目立つこともある。』
『軽症の場合は、日常生活を低下させないので治療は不要である。つまり軽度のジスキネジアを消失させる必要は通常ない。』
『日常生活に支障があるようなジスキネジアの治療について解説する。』(PDガイドラインより)

ジスキネジアはon時に現れる症状なので、本人は「ジスキネジアが出ている」=「調子が良い」と判断することがある。
つまりジスキネジアによる日常生活の支障が出ていても、ジスキネジアの出ていない状態(peak-doseに達していない状態)での日常生活の支障を比較して、「ジスキネジアが出ている状態の方が生活がしやすい」と判断する方が、少なからずおられることを念頭において治療を開始するか否かを決定する方が良いと考えています。

ジスキネジア

以下の順序で行うことが推奨されています。(PDガイドラインより、一部改変)
(四僂靴討い織┘侫圈(セレギリン)減量・中止。
∧四僂靴討い織灰爛織(エンタカポン)減量・中止。
L-ドパの1回量を減量して投与回数を増やす。
L-ドパの1回量を減量し、不足分をドパミンアゴニストの追加・増量で補う。
ゥ▲泪鵐織献鵑療衢燭△襪い倭量。
手術療法(視床下核刺激術等)。

私の場合には、以下のような手順で治療しています。
.┘侫圈爾慮採漫γ羯

L-ドパの1回量を減量して投与回数を増やす。
 服薬に支援が必要な場合には、これは選択できない場合があります。

L-ドパの1回量を減量し、使用していない場合にはコムタン(エンタカポン)を併用する。
 高齢者の場合には、L-ドパを300mg/日以下まで減量を試みる。
 「L-ドパ+コムタン」はジスキネジアを増加させることはないとのエビデンスはありますが、「L-ドパ(減量)+コムタン(併用)」がジスキネジアを減少させたエビデンスはありません。
 私の場合には、L-ドパの減量を50-100mg/2週間のペースで減量しています。
 ジスキネジアが軽減したが、オフの出現、オフ時間の延長などでADLが低下した場合にはコムタンを併用するようにしています。
 しかしADLが少しでも低下すれば生活が破綻してしまう可能性がある場合には、L-ドパ減量とコムタン併用を同時に行うこともあります。

L-ドパの1回量を減量し、不足分をドパミンアゴニストの追加・増量で補う。
 最近はミラペックスやニュープロパッチなどの1日1回投与のものを使用することが多い。

ゥ轡鵐瓮肇譽(アマンタジン)の開始・増量。
 シンメトレルの開始・増量はパーキンソニズムを悪化させることなく、ジスキネジアを抑制するとのエビデンスがあります。シンメトレルの抗ジスキネジア効果は高いとされています。
 ネックとなるのは、日本では300mg/日までしか使用できないこと、経時的(8ヶ月から1年かけて)に抗ジスキネジア効果が減弱することです。 
 

diphasicジスキネジア
『L-ドパの血中濃度の上昇期と下降期に二相性に出現し、on時の間はジスキネジアは消失している。
下肢優位に出現し、反復性のバリスム様の動きやジストニアが目立つことが多い。
脱神経したドパミン受容体への波状のドパミン刺激が重要な機序であると考えられている。』
『diphasicジスキネジアの治療は困難でありエビデンスも乏しい。確立された治療法はない。』(PDガイドラインより)

on時とoff時の中間期を減らすことが治療の主眼となります。
私の場合には、
L-ドパを減量せずに、投与回数を増やす。
L-ドパの1回量を減量し、不足分をドパミンアゴニストの追加・増量で補う。

,蓮peak-doseジスキネジアのところで述べたような理由で採用できない場合が少なくありません。
△亡悗靴討蓮効果があるというエビデンスはありません。自宅(施設)で療養している方々では、ジスキネジアのみが問題になることが少ないですが、他の症状との兼ね合いで、△鮑陵僂垢襪海箸多くなります。



オフ・ピリオド・ジストニア(パーキンソン病の運動症状)

  • 2013.05.23 Thursday
  • 08:00
パーキンソン病関連疾患(特定疾患に認定されている)の方は、10万人を超えています。
また運動症状が進行することで、神経内科専門外来に通院することが困難になる方が少なくありません。
そのため、神経内科を専門にしない在宅医もパーキンソン病の診療を担当することがあります。

これまでパーキンソン病は歩行障害や振戦などの運動障害の中心が中心に行われてきました。しかし最近は睡眠障害や鬱などの非運動症状の治療にもスポットが当たってきています。

神経内科を専門としない医師に、通院が困難になったパーキンソン病の方々への対処法を記載していきます。

初回は、「オフ・ピリオド・ジストニア」です。
パーキンソン病治療ガイドライン2011(以下、PDガイドラインとします)では、運動症状に分類されています。
PDガイドラインでは、
「off-periodジストニアは、抗パーキンソン病薬の効果が低下したときにみられる。したがって、起床時から早朝内服効果が現れるまでの間に生じることが多いが(早朝ジストニア)、日中のoff時に現れることもある。下腿と足の筋に強い持続性の筋収縮が起こり足関節は固定して動かせず足趾の底屈を呈することが多い。歩行は障害される。痛みを伴うことが多い。」
とされています。

在宅医療を受けておられる患者さんでは、ジストニアが無くても歩行は困難な場合が多く、患者さんたちは「痛み・痺れ」と表現されることが多い症状です。
「off」症状を認める方で、決まった時間に痛みを認める場合には、このオフ・ピリオド・ジストニアを疑う必要があります。
パーキンソン病の方は「薬の効果が切れていく」ことを自覚されることが多いので、痛みのタイミングが「off時」に重なるかどうかを確認することも診断の一助となります。
オフ・ピリオド・ジストニアを疑った場合には、NSAIDsやリリカ(プレガバリン)を使用する前に、オフ・ピリオド・ジストニアの治療を試みる必要があります。

ジスキネジア

具体的な処方例は、
(早朝のジストニアに対して)
.咫Ε轡侫蹇璽(0.5mg) 1錠 就寝前
もしくは
▲譽ップ(1mg) 1錠 就寝前
を追加する。

効果が全くない場合は、オフ・ピリオド・ジストニアではない可能性を考える。
 寝返りが困難になっている場合には、同じ姿勢を続けることによる脊髄症や神経根症状による痺れや痛みが出現することがあり、その可能性を考えるようにします。
効果が乏しい場合は、ビ・シフロールやレキップを漸増する。副作用と効果を計りにかけて、最終的に投与量を決定します。

ミラペックス(ビ・シフロール)やニュープロパッチは、論評できるほど使用経験はありません。
少数例ですが、オフ・ピリオド・ジストニアに対する効果は低い印象を持っています。

(日中のジストニアに対して)
原則的にドパミンの効果が切れる時間帯を作らないなので、「off」に対する治療と考えています。

詳しくは後述しますが、
L-ドパ製剤の分割投与
L-ドパ製剤とコムタン(エンタカポン)を併用
F中にドパミンアゴニストを追加
ぅ┘侫圈(セレギリン)を追加
ゥ肇譽蝓璽(ゾニサミド)を追加
等のいずれかを考えます。

diphasic(二相性)ジスキネジアが、下肢のジストニアとして認められることがあります。
diphasic(二相性)ジスキネジアの治療は、オフ・ピリオド・ジストニアの治療とは異なります。

PDガイドラインでは「on-periodジストニア」の治療は、「peak-doseジスキネジア」の治療と同じと考えられるとの記載があります。

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