有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(9)

  • 2012.10.05 Friday
  • 09:00
【考察】
在宅医療を推進しようとしている状況の中で、在宅医療に熱心な診療所・訪問看護ステーションを中核にして、居宅サービスの整備は進んでいる地域も増加してきている。
当院のある地域では、人工呼吸管理を行なっている患者でも、条件が整えば自宅で過ごすことが可能となっている。

介護保険では、家族の介護負担軽減のためにショートステイは制度化されている。
しかし人工呼吸管理を受けている患者などは、介護に加えて医療処置を家族が行わなければならず、家族の負担はより大きいものであるにもかかわらず、介護施設では対応できないためにショートステイが利用できない現実は、制度面では放置されてきている。

急性期・専門病院を中心にレスパイトケア入院を実施してきていたが、医療保険(診療報酬)で制度化されず、社会的入院に位置づけられていることもあり、レスパイトケア入院から撤退する病院も出てきている。

そこで、病床稼働率の低い有床診療所でレスパイトケア入院受け入れが出来ないかと考え、当院の病棟をモデルとして検討してきた。

現在の診療報酬体系では、有床診療所で神経難病患者のレスパイトケア入院を行うことは経営的視点から考えると不可能である。
Plan Dを行ったところで、当院の病棟部門が黒字化するわけではない。

レスパイトケア入院が必要な患者が継続的に利用できるような、本来の意味でのレスパイトケア機能を維持しながら病棟を維持していくためには、クリニック側は看護・介護業務の見直しによる時間短縮をはかり、その上で診療報酬の増額・新設を働きかけていく必要があると考える。

(Plan B)での、1患者・1日あたりのコストの推定
87530円=74630円(人件費:医師の人件費含む)+8600円(医材料費等)+4300円(地代等)
40730円=27830円(人件費:医師の人件費含む)+8600円(医材料費等)+4300円(地代等)
29540=27830円(人件費:医師の人件費含む)+8600円(医材料費等)+4300円(地代等)

現実の診療報酬とのギャップ
58330円
11530円
10440円

当院をモデルとしたレスパイトケア病棟を維持していくためには、施設基準での制限を設ける必要はあるが、
有床診療所の入院基本料を1000点/日人工呼吸管理料を100点/日の増額。
コミュニケーション支援加算(4500点/日)の新設が必要である。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(8)

  • 2012.10.05 Friday
  • 08:00
(Plan C)
Plan A(平均稼働病床15床)とPlan B(看護・介護時間の短縮)ともに実施した場合を考えます。

人件費:
 ^媚彖堕未困難な患者:24.9(時間/日)×2925(円/時間)=72830(円/日)
 意思疎通が可能もしくは不可能で、かつ人工呼吸管理を行なっている患者:
   8.9(時間/日)×2925(円/時間)=26030(円/日)
 人工呼吸管理を行っていない患者:6.1(時間/日)×2925(円/時間)=17840(円/日)
医材料費など:
  ↓◆8600(円/日)
    5600(円/日)
地代等:
  銑 3700円/日

レスパイトケア病棟での、受け入れ患者を 2人(月間 60日)、 4人 (月間 120日)、 9人(月間 270日)と想定した場合、

 60(日/月)×24.9(時間/日) = 1494(時間/月)
120(日/月)×  8.9(時間/日) = 1068(時間/月)
270(日/月)×  6.1(時間/日) = 1647(時間/月)

推定される一ヶ月の看護・介護時間の合計:4209(時間/月)  
  現在の一ヶ月の看護・介護時間の合計:3732(時間/月) 
 不足する一ヶ月の看護・介護時間の合計:  477(時間/月) 

この不足分を埋めるのに必要な人員は、看護師と介護士の現在の比率をそのまま利用すると、看護師1.8人、介護士0.9人となる。
看護師2人、介護士1人を雇用した場合には、さらに143万円/月の人件費が増加することになる。(医師の病棟業務時間は変更しないものとした。)

医材料費等は入院患者の増加に伴い120万円/月、増加すると想定される。

診療報酬は入院患者の増加に伴い391万円/月、増加すると想定される。

患者数増加では、赤字幅が130万円/月、軽減すると考えられる。
Plan Bより改善幅が小さいのは、小数点以下の数字を切り上げているためです。
これは、平均稼働病床を15床〜18床で計算しても、スタッフの増員は必要となるため、
月間122〜138万円程度の改善に留まります。
小数点以下の部分を、残業を増やす、非常勤職員で対応することで150〜200万円/月の改善が見込めますが、出勤頻度の低い非常勤職員は患者(特に意思疎通が困難な患者とのコミュニケーション)に慣れないこともあり、看護・介護時間の短縮は見込めないと考えています。

(Plan D)
これは「悪魔の囁き」プランです。
看護・介護時間の長い「意思疎通が困難な患者」の受け入れを、さらに制限や中止した場合を考えます。

(Plan D-1)
レスパイトケア病棟での、受け入れ患者を 1人(月間 30日)、 5人 (月間 150日)、 7人(月間 210日)と想定した場合、

 30(日/月)×25.9(時間/日) =   777(時間/月)
120(日/月)×  9.9(時間/日) = 1485(時間/月)
210(日/月)×  7.1(時間/日) = 1491(時間/月)

推定される一ヶ月の看護・介護時間の合計:3753(時間/月)  
  現在の一ヶ月の看護・介護時間の合計:3732(時間/月) 
 不足する一ヶ月の看護・介護時間の合計:  21(時間/月) 

医材料費等は入院患者の増加に伴い86万円/月、増加すると想定される。

診療報酬は入院患者の増加に伴い277万円/月、増加すると想定される。

(Plan D-2)
レスパイトケア病棟での、受け入れ患者を 0人(月間 0日)、 6人 (月間 180日)、 9人(月間 270日)と想定した場合、

   0(日/月)×25.9(時間/日) =     0(時間/月)
120(日/月)×  9.9(時間/日) = 1782(時間/月)
210(日/月)×  7.1(時間/日) = 1917(時間/月)

推定される一ヶ月の看護・介護時間の合計:3699(時間/月)  
  現在の一ヶ月の看護・介護時間の合計:3732(時間/月) 
  余剰の一ヶ月の看護・介護時間の合計:  33(時間/月) 

医材料費等は入院患者の増加に伴い120万円/月、増加すると想定される。

診療報酬は入院患者の増加に伴い391万円/月、増加すると想定される。

意思疎通が困難な患者を入院を1床稼働に制限すると200万円/月、中止すると270万円/月の経営改善が見込める。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(7)

  • 2012.10.04 Thursday
  • 09:00
(Plan A)
レスパイトケア病棟を平均15床利用で稼働している状況となった場合の患者ごとのコストは、人件費は看護・介護内容を変更しない限り、変化はないと考えている。
医材料費も変化ないが、光熱費などは患者一人当たりの減少すると推定される。(基本料金は患者数均等割になるが、実際には微々たるものなので、今回はデータに反映せず。)
地代等は減少すると考えられる。

人件費:
 75760(円/日)
 28960(円/日)
 20770(円/日)
医材料費など:
  ↓◆8600(円/日)
    5600(円/日)
地代等:
  銑 3700円/日 (←6100円/日)

レスパイトケア病棟での、受け入れ患者を 2人(月間 60日)、 4人 (月間 120日)、 9人(月間 270日)と想定した場合、

 60(日/月)×25.9(時間/日) = 1554(時間/月)
120(日/月)×  9.9(時間/日) = 1188(時間/月)
270(日/月)×  7.1(時間/日) = 1917(時間/月)

推定される一ヶ月の看護・介護時間の合計:4659(時間/月)  
  現在の一ヶ月の看護・介護時間の合計:3732(時間/月) 
 不足する一ヶ月の看護・介護時間の合計:  927(時間/月) 

この不足分を埋めるのに必要な人員は、看護師と介護士の現在の比率をそのまま利用すると、看護師3.6人、介護士1.8人となる。
看護師3人、介護士3人を雇用した場合には、さらに266万円/月の人件費が増加することになる。(医師の病棟業務時間は変更しないものとした。)

医材料費等は入院患者の増加に伴い120万円/月、増加すると想定される。

診療報酬は入院患者の増加に伴い391万円/月、増加すると想定される。

患者数増加では、赤字幅が5万円/月、軽減する程度の効果しか期待できない。
これは現在の診療報酬体系では看護師・介護士の人件費すら賄えませんから、量的に拡大しても当然、効果はありません。

(Plan B)
現在の人員配置を変更せずに、看護・介護業務を見直し、看護・介護時間短縮をはかり、入院患者数を増やすことが可能な場合を考える。
医材料費も変化ないが、光熱費などは患者一人当たりの減少すると推定される。(基本料金は患者数均等割になるが、実際には微々たるものなので、今回はデータに反映せず。)
地代等は減少すると考えられる。

(A)人工呼吸管理・吸引
(B)体位交換・ポジショニング
(C)コミュニケーション、コール対応
(D)食事介助・経管栄養(準備を含む)
(E)入浴、更衣、保清
(F)その他、記録、休憩

以上の業務の中で、
(F):患者と直接かかわらない記録の部分で入力フォーム作成などによる簡便化を図る。
   また入院時の内服薬確認などにかかる時間の短縮を図る。
  このためには、当院以外の在宅主治医の先生方には是非「一包化」指示を出していただきたいと考えています。
  また、ご家族・介護者の方に内服薬のセッティングをして頂くことも必要と考えている。
(D):在宅では種々の経管栄養剤を使用されているがレスパイトケア入院中は、
    既存の半固形化製品の使用へ統一を行いたいと考えている。
(E):人工呼吸管理を行なっている患者の入浴方法の見直し。
(C):業務の改善ではないが、レスパイトケア入院を繰り返し利用して頂くことで患者と病棟スタッフがお互いに慣れることによりコミュニケーションが取りやすくなると考えている。

以上のことを行い、各患者の看護・介護時間が1日1時間の短縮が可能であったと仮定した場合、
人件費:
 ^媚彖堕未困難な患者:24.9(時間/日)×2925(円/時間)=72830(円/日)
 意思疎通が可能もしくは不可能で、かつ人工呼吸管理を行なっている患者:
   8.9(時間/日)×2925(円/時間)=26030(円/日)
 人工呼吸管理を行っていない患者:6.1(時間/日)×2925(円/時間)=17840(円/日)

またレスパイトケア病棟での、業務量(3732時間/月)から考えた場合、
受け入れ患者を 2人(月間 60日)、 3人 (月間 90日)、 8人(月間 240日)の受け入れが可能となる。

 60(日/月)×24.9(時間/日) = 1494(時間/月)
 90(日/月)×  8.9(時間/日) =   801(時間/月)
240(日/月)×  6.1(時間/日) = 1464(時間/月)
合計:3759時間/月

人員配置の変更はないので、人件費は変化なし。
(残業代は月間30時間程度増加すると考えられるが、考慮していない。)

医材料費等は入院患者の増加に伴い77万円/月、増加すると想定される。

診療報酬は入院患者の増加に伴い252万円/月、増加すると想定される。

このプランでは、月間175万円の収益改善が見込める。
看護・介護の効率化は収益改善へのインパクトは大きく、避けては通れない道である。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(6)

  • 2012.10.04 Thursday
  • 08:00
次に、レスパイトケア病棟を維持するのに必要な診療報酬を考えます。

当院の場合、看護師、介護士、療法士の社会保障費まで含んだ人件費は、2925円/時間となっている。

現在のように平均9床が稼働している状況では患者ごとのコストは
人件費:
 ^媚彖堕未困難な患者:25.9(時間/日)×2925(円/時間)=75760(円/日)
 意思疎通が可能もしくは不可能で、かつ人工呼吸管理を行なっている患者:
   9.9(時間/日)×2925(円/時間)=28960(円/日)
 人工呼吸管理を行っていない患者:7.1(時間/日)×2925(円/時間)=20770(円/日)
医材料費など:
  ↓◆8600(円/日)
    5600(円/日)
地代等:
  銑 6100円/日

総計:
  90460(円/日)=75760+8600+6100(円/日)
 ◆43660(円/日)=28960+8600+6100(円/日)
 :32470(円/日)=28960+5600+6100(円/日)

現実とのギャップ:
  63260(円/日)=90460-27200(円/日)
 ◆16460(円/日)=43660-27200(円/日)
 :13370(円/日)=32470-19100(円/日)

現在、病床稼働数が10床未満で推移している理由の一つは、総室が3室しかなく、うち男性部屋・女性部屋をスイッチしながら使用しており、切り替え時期に稼働率が減少することである。(総室のうち一つを訪問看護・訪問リハのスタッフルームに使用しているため)

平成25年4月に、クリニック内に設置している訪問看護・訪問リハ部門を訪問看護ステーション化し、クリニック外へ移動させ、総室を4室(病床数15床より19床へ増床)とする予定である。

次回以降で赤字幅を減らすための、プランを検討する。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(5)

  • 2012.10.03 Wednesday
  • 08:00
私の発表へ戻ります。

スライド1-13

一ヶ月の病棟維持のためのコストです。
人件費の中には、病棟がなくても雇用しなければならない事務員の費用は含んでいません。
病棟専従で働く看護師、介護士、医療事務の人件費と医師、療法士の人件費は、病棟で働いている勤務時間の実績により分配してあります。
また給与以外の保険料の社会保証費用も含んでいます。
レセプト作成など一部病棟業務に関わりを持っていますが、病棟に配置していない事務職員の費用は含んでいません。
平成24年度は平成22年度と比較すると看護師1人、医療事務1人が増員されています。
その状況下で人件費の増額が13万円/月で収まっているのは、残業時間の減少です。
看護師1勤務あたりの平均残業時間は0.85時間、介護士の1勤務あたりの平均残業時間は0.23時間です。25%の割増が人件費に与えるインパクトは少なくありませんので、人員が確保できるなら、一人雇用して残業を減らした方が良いと考えています。
当院の看護師は園児から小学生の子供を持つ40歳前後が多く、残業が少ないことは離職予防にも役立っていると考えています。

光熱費などは医材料費に含んでいます。
地代、光熱費クリニック全体の費用から、クリニック全体の面積から病棟の面積の割合で算出しています。そのため光熱費は実際病棟で使用しているものより低く算出されている可能性が高いです。
医材料等のコストが平成22年度から平成24年度までに92万円上昇した原因は、入院患者数の増加、人工呼吸管理患者数の増加によるレンタル料・光熱費の上昇、ディスポーザブル物品の採用等が原因であった。

スライド1-14

一方、レスパイトケア入院で得られる診療報酬です。
入院のべ日数の増加により、当然増加しています。
しかし、一日あたりの診療報酬は変化ありませんでした。

平成24年度の診療報酬改定で、
人工呼吸管理患者では算定できていた超重症児(者)入院診療加算(400点/日)、在宅重症児(者)受入加算(200点/日、5日間まで)が算定できなくなったため、他の診療報酬(特殊疾患入院施設管理加算 350点/日等)を算定することになり、入院基本料で108点/日の減額改定であった。実際には10点/日の減額で収まっているのは、リハビリテーション等の入院基本料が増加しているためである。

人工呼吸管理を行なっていない患者では、入院基本料11点、総合評価加算30点が増額されており、41点の増額が見込まれていたが、実際には10点/日の減額となっている。
これは平成22年度に高額の薬剤を使用する患者が多く、診療報酬が高額になったためと考えられる。

平成24年7月13日の厚生労働省保険局医療課より出された事務連絡により、超重症児(者)入院診療加算が平成24年4月以降も算定可能とされ、現在より15万円/月の増額となると考えられる。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(4)

  • 2012.10.02 Tuesday
  • 08:00
 私の発表ではなく、病棟からの発表演題『レスパイトケア入院における患者ケア等による看護・介護負担の分析』からのデータです。

当院のレスパイトケア病棟は平均稼働病床は、平成23年度で9.0床、平成24年度で9.1床です。

病棟スタッフは、
ヾ埜郢 14人(うち1人は非常勤)
介護士 7人(うち1人は非常勤)
N屠〇痢4人(理学療法士1人、作業療法士1人、言語聴覚士2人、
  訪問リハビリテーションと兼務)
です。看護師と介護士は病棟専従です。

7:1看護基準で必要な看護師数は7人(計算上、6.8人)で、急性期病院一般病棟の倍近い看護師を配置している。

この人員配置でも、これまでの経験から人工呼吸管理を行い、意思疎通が困難である患者は、看護・介護の負担が大きいことから入院人数を制限している状況にある。
病棟スタッフの業務内容を調査し、各業務の看護・介護の負担を明らかにし、今後のレスパイトケア病棟での看護・介護のあり方をどのようにしていくかを考える必要があった。

【方法】
レスパイトケア病棟で勤務したスタッフの調査期間内の業務内容ごとの時間と、特定の患者に係わった時間を調査。
調査期間内に入院した患者の状態から、それぞれの医療内容などの患者状態ごとの看護・介護時間を推定する。

業務内容は、
(A)人工呼吸管理・吸引
(B)体位交換・ポジショニング
(C)コミュニケーション、コール対応
(D)食事介助・経管栄養(準備を含む)
(E)入浴、更衣、保清
(F)その他、記録、休憩
に分類している。

調査期間:
平成24年06月25日午前9時からから07月02日午前9時までと、平成24年07月09日午前9時から07月16日午前9時までの2週間とした。

【結果】
調査期間中、看護師13人(平均勤務期間:24.9ヶ月)、介護士7人(同:22.1ヶ月)、療法士4人(同:28.5ヶ月)が病棟業務を行なっている。
調査期間中、非常勤看護師は勤務が無かった。

勤務時間は看護師1083.5時間(うち残業71.4時間)、介護士524.0時間(うち残業13.1時間)、療法士139.0時間(療法士の残業は未調査)であった。

調査期間中の入院患者は35人、のべ入院日数144日(10.3床/日)。

気管切開人工呼吸管理患者     11人  43日(29.9%)
非侵襲的人工呼吸管理患者       5人    19日(13.2%)
気管切開患者             5人  20日(13.9%)

経管栄養を行なっている患者    29人  113日(78.8%)
食事介助が必要であった患者      3人  13日(  9.0%)

意思疎通が困難な患者         8人  31日(21.5%)

スライド1-11

急性期病院の一般病棟での業務とは大きく異なると考えています。
僅かしか動かない手指や眼瞼、下顎等を使用して意思伝達装置を操作している方のスイッチセッティングには非常に時間が掛かります。また意思伝達装置を使用して文章を入力する場合も、会話では数秒で済むものが数分から10分以上かかることも、少なくありません。文字盤を使用しての意思表出も同様です。
また、頻回のナースコールを押す患者も少なくありません。
これらが意思疎通が困難な患者は少ないけれど、コミュニケーション等に時間がかかる原因です。

体位交換・ポジショニングは、数ミリ単位での調整を希望される方も多く一度の調整で済むことはほとんどありません。またコミュニケーションを取りながら対応する必要があり複数(2人〜3人)での対応となるためのべ時間が長時間化します。

喀痰吸引、人工呼吸管理に関わる時間は、全体の中では比率は低くなります。

スライド1-12

患者一人あたりの看護・介護時間の推定値です。
看護・介護時間の長い上位8人はいずれも意思疎通が困難な患者です。
その8人中6人がALS患者であり、6人がTV患者、2人がNPPV患者です。

意思疎通が困難な患者の平均看護・介護時間は25.9時間となる。
これはスイッチセッティング、体位交換・ポジショニング、入浴等が複数で対応する必要があるために24時間を超える結果となっている。
また意思疎通が困難な患者ののべ入院日数は全体の21.5%であるが、看護・介護時間の56%を占めている。つまり、現在の人員配置では同時期に4人の意思疎通が困難な患者のレスパイトケア入院を受け入れることは困難であることがわかる。

意思疎通が可能もしくは不可能な人工呼吸管理を行なっている患者の平均看護・介護時間は9.9時間であり、人工呼吸管理を行なっていない患者の平均看護・介護時間は7.1時間であった。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(3)

  • 2012.09.30 Sunday
  • 08:00
平成22年度から平成24年度(6月まで)のレスパイトケア入院の実績です。

スライド1-6
平成24年度でも、10床未満での運用になっています。
これは後述しますが、現在の人員配置ではこれ以上の患者を受け入れることは困難な状況です。

スライド1-7
ALS患者の比率は徐々に減少してきている。
平成22年度は、主としてALS患者を中心にレスパイトケア入院を行なっていたためにALS患者の比率が高くなっている。
平成23年度は、ALS患者の月間のべ入院日数は92.5日であり、平成22年度の72.8日より増加しているが、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、交通事故後遺症などの患者の利用が増加したためにALS患者の比率が低下している。


スライド1-8
スライド1-9
介護施設でのショートステイ利用が不可能な患者を中心に受け入れていることもあり、TV・NPPV患者、気管切開患者が60%以上を占めている。「処置なし」としている患者の多くも経管栄養、喀痰吸引、痙攣発作等のために介護施設でのショートステイの利用が困難な患者が大部分を占めている。また若年のため介護保険を利用できない患者の受け入れも行なっている。

平成23年度から平成24年度にかけてTV・NPPV患者の比率・実数とも減少している。
また意思疎通が困難な患者も比率・実数とも減少している。
これは前述した通り、意思疎通が困難な患者の受け入れを平成23年度中途から同時期に2人に制限している。意思疎通が困難な患者の全員がTV・NPPV患者であり、90.5%がALS患者であることから、今後もTV・NPPV患者、ALS患者の比率は現状維持、もしくは減少するものと考えている。

スライド1-10



有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(2)

  • 2012.09.29 Saturday
  • 09:00
レスパイトケア入院の入院先確保事業は、平成10年に国の難病対策の「重症難病患者入院施設確保事業」として制度化されたと考えています。
ここで「重症難病患者入院施設確保事業」のおさらいをしてみましょう。

各都道府県に、その調整役として「難病医療専門員」が配置されている難病情報センターが開設されている。
大阪府の場合は、府立急性期・総合医療センター内にあり、和歌山県や三重県のように大学内(多くは神経内科教室に併設)に開設されており、都道府県により異なります。
また近隣では奈良県のように開設されていない都道府県もあります。
(全国で、青森県、奈良県、沖縄県は開設されていない。)

以下に、重症難病患者入院施設確保事業(http://www.nanbyou.or.jp/entry/1728)の概要を記します。

----------------------------------------------------------------------------------------------------
 都道府県は、概ね二次医療圏ごとに1ケ所ずつの難病医療協力病院を整備し、そのうち原則として1ケ所を難病医療拠点病院として指定し、重症難病患者のた めの入院施設の確保を行い、また重症難病患者の受け入れを円滑に行うために、拠点病院、協力病院、保健所、関係市町村等の関係者によって構成される難病医 療連絡協議会を設置し、さらにこの事業を円滑に行うために保健師などの資格を有する難病医療専門員を配置するとしています。その結果、重症の難病患者が、 必要な場合に入院することができる医療体制を整備し、難病患者及び家族の療養生活の安定を図る事業です。

1 事業の実施主体 
都道府県 

2 対象患者 
難治性疾患克服研究事業(臨床調査研究分野)の対象疾患患者 

3 実施方法 
都道府県は、難病医療連絡協議会(連絡協議会)を設置するとともに、概ね二次医療圏ごとに1ケ所ずつの難病医療協力病院を指定し、そのうち原則として1か所を難病医療拠点病院に指定して、重症難病患者のための入院施設の確保を行う。 

 ‘馼属緡渡⇒躑┻腸 
・拠点病院、協力病院、保健所、関係市町村等関係者で構成 
・難病医療専門員(保健師など)を原則1名配置 
・拠点病院、協力病院への入院患者の紹介、患者等からの各種相談に対応 

◆‘馼属緡典鯏隻賊 
・難病医療相談窓口の設置(必要に応じて相談連絡員1名を配置) 
・協力病院からの要請に応じて高度の医療を要する患者の受け入れ 
・医療従事者向け難病研究会の開催 
・関係機関、施設への医学的な指導・助言 

 難病医療協力病院 
・拠点病院からの要請に応じて患者の受け入れ 
・地域施設への医学的な指導・助言 

ぁ〆濛靂斗榁罎僚転鋲馼卒擬圓任△辰董介護者の事情により、在宅で介護をうけることが困難になった場合に、一時的に入院することが可能な病床を、各都道府県の拠点病院等に確保する。

※平成22年度新たにい在宅療養中の重症難病患者のレスパイト入院のための病床を確保するための事業として実施されることになり、さらに難病医療体制の整備を図るとしています。
----------------------------------------------------------------------------------------------------

難病医療専門員は本来、重症難病患者入院施設確保事業の調整役として配置された経緯から考えると、い平成22年度に明文化されたことに驚きます。

以上は、難病医療専門員が多く参加する、この研究会ではおさらいする必要なない部分ですので、スライドには起こしていません。


以下、発表へ戻ります。

スライド1-4

今回の第2報では、平成24年度の診療報酬改定が有床診療所のレスパイトケア入院に与えた影響と、病棟看護師・介護士の業務量を調査し、患者特性に応じた診療報酬を考える。

スライド1-5

結論からすると、平成24年度の診療報酬改定ではレスパイトケア入院の診療報酬はマイナス改定であった。というか変化なし。
第1報と同様に、12000円/日の診療報酬増額がないと病棟が維持できないことが明らかになった。
業務量調査から明らかになったことであるが、意思疎通が困難な患者の看護・介護量は意思疎通が可能な患者や意思疎通が不可能な患者の患者の看護・介護量の2.5〜3.5倍である。
一定の施設基準や患者の基準を設ける必要はあるが、コミュにケーション援助加算(4500点/日)を新設しない限り、意思疎通が困難な患者のレスパイトケア入院を受け入れる事業は継続させることは困難と考える。

経営的視点から考えれば、事業継続のためにはコミュにケーションエイドやオリジナル・スイッチの持ち込みを禁止する等の方法で、意思疎通が困難な患者の看護・介護量を減らすことも考慮すべきプランである。
しかし、このプランを導入すれば、意思疎通が困難な患者の多くはレスパイトケア入院を行わなくなる可能性が高い。

最も家族の介護負担が大きいと考えられている意思疎通が困難な患者の受け入れが出来ないのであれば、レスパイトケア専門病棟の存在意義が問われると考えている。

有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)(1)

  • 2012.09.29 Saturday
  • 08:00
有床診療所におけるレスパイトケア入院はビジネスとして成立するか?(第2報)

平成24年09月28日(金)〜29日(土)に札幌市教育文化会館で開催された
第9回日本難病医療ネットワーク研究会(http://www.med.kyushu-u.ac.jp/nanbyou/kenkyu/kako/09society.php)で発表予定でしたが、演者が体調不良のために取り下げた演題です。
ポスター発表の予定でしたが、せっかく作成したので口演風にしてみました。

ちなみに第1報は、平成22年9月に開催された第7回日本難病医療ネットワーク研究会(横浜)で発表しており、目的と結論は以下の通りです。

スライド1-2

当院が診療域としている大阪府・北摂地域は気管切開・人工呼吸(TV)管理を行う在宅診療所が多い。平成22年に調査した時には、自宅でTV管理を受けているALS患者の在宅医療を行なっている診療所は12ヶ所あった。
訪問看護ステーション数は人口10万人あたり豊中市7.0ヶ所、吹田市7.7ヶ所と多い。
(大阪府:5.9ヶ所、全国4.7ヶ所:平成23年度のWAN-NETと総務省のデータより)
また当院だけでも、年間20回程度の訪問介護事業所を対象とした喀痰吸引の指導を実施しており、喀痰吸引を行なってくれる介護事業所は充実していると考えている(←データはなく、あくまでも印象です)。

受け手側(在宅でのサービス提供事業所)や障害者自立支援法による制度等が充実していることもあり、患者・家族が希望すれば、気管切開・人工呼吸管理を受けていても自宅で過ごすことが出来やすい地域と考えている。

当院で平成23年度に気管切開・人工呼吸管理を行なっている患者は25人であった。

介護者を支援する制度が充実していると言っても、家族の介護負担が無くなるほどではないので、家族は介護者として中心的役割を期待されている。

つまり自宅で過ごす気管切開・人工呼吸管理を受けている患者が増加することは、家族介護者の介護負担を軽減するためのレスパイトケア入院のニーズも増加することを意味する。

当院の近隣では、当院と他の2病院が神経難病患者のレスパイトケア入院を実施していたが、一つの病院は平成23年度中に神経難病患者のレスパイトケア入院を中止し、もう一つの病院はレスパイトケア入院は個室のみで対応することとなり、患者・家族の経済的負担が大きくなり、利用を中止せざるを得なくなった患者もある。

レスパイトケア入院の目的はいくつかあるが、やはり主目的は「介護者(家族)の介護負担の軽減」である。
レスパイトケア入院患者の病状は安定している患者であり、救急患者や専門的な精査・加療を必要とする患者の診療を担当するべき急性期病院や専門病院の一般病棟の役割ではないと考えている。
患者家族の介護負担軽減のための入院は、医療保険で行うべきではなく、介護保険で行うべきであるとの考えも根強いものもあるが、医療処置の多い患者は、介護施設でのショートステイは不可能である。

そこで安定的にレスパイトケア入院先を確保するために『病床稼働率が低い有床診療所の病床を利用したレスパイトケア入院がビジネスモデルとして成立するかどうかを、当院をモデルにして検討』した。

スライド1-3


また自宅で比較的充実したサービスを受けている患者にとってレスパイトケア入院は受けるサービスの低下を意味することが多い。そのためレスパイトケア入院を行なって見たものの「二度と行かない」と言う患者もそれなりの比率である。当院の病棟の体制でも平成23年度に、当院が在宅医療を担当しておらずレスパイトケア入院のみを利用した61人中9人は1回のみの利用となっている。
レスパイトケア入院を継続的に利用してもらうためには、患者・家族が許容できる程度のサービスを提供する必要があり、そのためには人工呼吸管理、コミュニケーションエイド等の援助が必要な患者のレスパイトケア入院では、十分な人員配置が必要である。
その結果、人件費が高騰し病棟運営費の70%以上を占め、現在の診療報酬体系ではその人件費の負担に耐えられない。

有床診療所の入院基本料は低く、人工呼吸管理を行っていても診療報酬は27500円/日である。
人工呼吸器のレンタル料が3000円/日かかることもあり、実質24500円/日である。
つまり当院のモデルでは有床診療所でレスパイトケア入院を行うことは現実的ではなく、一般化は困難であると考えられた。

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