不安(BPSDの対処法)(140)

  • 2012.11.25 Sunday
  • 08:00
認知症テキストブックでは、「不安・焦燥」としてまとめて取り上げています。
焦燥は通常、英語圏では「agitation」の中に含まれると考えられています。
agitetionは、不穏・興奮とも訳される言葉であり、焦燥は不穏・興奮と分けて考えることは困難な症状と思います。

International Pschogeriatric Associatioでは、不安を「陽性・心理症状」、焦燥を「陽性・行動症状」として取り上げています。

不安とは「漠然とした恐れ」とされています。
軽度の認知症患者では、記憶障害などの中核症状の悪化に対して病識あるいは病感を持ち、不安をいだくことがあります。
財産や自分の健康状態など憂慮するようになり、徐々に日常生活における些細なことにも心配が広がるようになります。
認知症が進行すると、これらの不安を歪曲した形で認識するようになり、焦燥や徘徊などの他の周辺症状の原因となることもあります。

【不安に基づく特徴的な行動症状】
繰り返し
将来の行事や約束について何度も繰り返し訪ねることも、不安による行動症状と考えられています。この「繰り返し」は介護者に精神的な負担になることが多いので、早急に対処することが必要です。

ただし「繰り返し」行動すべてが不安に起因するわけではなく、「繰り返し」を不安に分類するのか。異常行動に分類するのかは個々に判断が必要です。

付きまとい
自分一人が取り残されるのではないかという不安が認められることが多く、一人になるのを異常に怖がるようになる。自宅内にいても家族(介護者)の後をついてまわることになり、さらに悪化した場合は、一人で置いておけずに常に介護者がそばに居る必要が出てくる。

「付きまとい」は徘徊に分類されることもあり、また特定の介護者にのみ付きまとい行為が認められる場合には強い依存心に起因していることもあります。

【病期・基礎疾患による不安の特徴】
参考にしているテキストでは、病期・基礎疾患による差異の記載はありませんでした。
自験例では、13.9%に認めていますが、他のアルツハイマー病の研究(参考)と比較すると少ないです。
基礎疾患別ではFTD(15.0%) > AD(13.5%) > VD(10.0%)でした。
DLB、その他の患者では、不安を認めた症例はありませんでした。

【不安への対処法】
不安の対象を検討し、対策を考えるのですが、定義にあるように「漠然と」していることが多く、不安の対象を明確にすることが出来ない場合が多いです。
なので、安心して生活できる環境をみんなで考えていることを伝えることが必要になります。
他の周辺症状と同様に、説得や注意、無視することは症状を悪化させますので、避けるようにしてください。介護者(家族)が疲れている場合には、無視したり、怒ったりすることがどうしても増えてしまいますので、デイサービスやショートステイの利用を積極的に行い介護者(家族)と離れる時間をつくるような対応が必要です。
慣れない施設でのショートステイは、認知症患者の不安を悪化させ不安を含めた周辺症状が悪化することがありますが、疲れている介護者(家族)に介護されるよりは良い結果がでることがあります。介護保険の上限などの制約がありますが、ショートステイ中に介護者(家族)への認知症に対する教育や自宅での療養環境の再考が必要な場合があります。

【不安への薬物療法
認知症疾患治療ガイドライン2010では、非定型抗精神病薬が選択肢としてあげられています。
以前、アルツハイマー病治療薬によるBPSD治療で記載したようにアリセプト、レミニールはアルツハイマー病患者の不安に有効であったとのデータもあります。
つまりアルツハイマー病治療薬と非定型抗精神病薬が選択肢となります。
認知症の不安に対して、一般的な抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)の使用は限定的に用いなくてはならないとされています。

私の場合は、
時間的余裕が無い場合は、
ベンゾジアゼピン系薬剤と同様の作用機序を持つチエノジアゼピン系薬剤(デパス)を使用することが多いです。理由は使い慣れているからです。
教科書的に推奨されているベンゾジアゼピン系薬剤は、ロラゼパム(ワイパックス)、オキサゼパム、アルプラゾラム(コンスタン等)です。
これらを使い慣れている場合は、これらの薬剤を使用する方が良いと思います。

その後、症状が安定すればセディールに変更していきます。
また時間的余裕がある場合は、セディール(タンドスピロン)から開始します。
セディールは不安以外に抑うつにも有効ですので、抑うつを併発している不安症状には適している薬剤と考えています。
またアリセプト・レミニールの開始・増量も考慮します。
中核症状によって介護に大きな支障が無い場合にはセディールを第一選択にしています。

ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症の周辺症状である「不安」「緊張」「易刺激性」「不眠」等に有効であるが、筋弛緩作用が強く転倒・骨折のリスクが高く、呼吸抑制作用が強いために、少量の非定型抗精神病薬を使用する方が安全と考えられている。

セディールは投与開始から効果出現まで約2週間かかるために、その間はベンゾジアゼピン系薬剤やチエノジアゼピン系薬剤を使用し、その後セディールにスイッチします。

なお、ご紹介頂いた患者さんには少なくない比率でデパスが処方されていますが、認知症の周辺症状に対してデパスが第一選択に来ることはなく、少量の非定型抗精神病薬の使用が推奨されています。
不安に対して、リスパダール、ジプレキサはグレードB、セロクエルはグレードC1です。

抑鬱(BPSDの対処法)

  • 2012.11.21 Wednesday
  • 08:00
「抑鬱」という言葉は日常的に使用していますが、いざ定義しようとなると難しいです。

厚生労働省のホームページからの引用を以下に示します。
「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状を抑うつ気分といいます。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態です。うつ状態という用語のほうが日常生活でよく用いられますが、精神医学では抑うつ状態という用語を用いることが多いようです。このようなうつ状態がある程度以上、重症である時、うつ病と呼んでいます。」

鬱病の診断基準(DMS-ICD-10)には、
・抑うつ気分
・興味と喜びの喪失
・活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少
が中核的な症状とされていますが、「抑うつ気分」自体があまり明確にはなっていません。

そして認知症患者では、認知症が進行が進行するにつれ気分を言語で表現することが困難となり、抑うつ気分を訴えることが少なくなってきます。
そのため、行動の変化で「抑うつ気分」を把握する必要性が高くなります。

また言語による質問でうつ病を診断することも、不可能になっていきます。

なので「何となく元気がない」状態で、かつアパシーを否定した場合を「抑うつ」と判断しています。

【病期・基礎疾患による抑鬱の特徴】
抑うつ気分は、ADでは40~50%の頻度で認められるとの報告があります。
抑うつ状態は認知症の初期の段階で認めやすいとされています。
記憶障害などを自覚することや、介護者(家族)により指摘・非難されることが影響すると考えられています。

うつ病は、VDでは多く認められると報告されていますが、病巣そのものが関連していると考えられています。
ADでは10~20%の頻度で認められると報告されています。認知症発症前にうつ病の既往がある場合は、無い場合と比較して、高頻度にうつ病を発症します。

【抑鬱への対処法】
認知症が初期であり、言語によるコミュニケーションが良好であれば、うつ病の診断は容易です。
認知症が進行するにつれ、診断は困難になっていきます。
特にADの場合には、アパシーが認められるようになり鑑別が必要になります。

〜缶姪に抑うつ気分があり喜びが失われている
⊆虐的なことを言って死にたいと表現する
うつ病の家族歴や認知症発症前の既往がある
のいずれかがあれば、抑うつ性障害と考えるようにしていますが、
前述したように「何となく元気がない」状態で、かつアパシーを否定した場合を「抑うつ」と判断しています。

基本的な対処法は「不安な状況にさせない」です。
非難・叱責はもちろん、励ましたり、気分転換や楽しみを与えようとして無理に活動させないことが必要です。
つまり見守ることが必要なのですが、ついつい介護者はなんらかの干渉をしてしまうことが多いです。そのために介護者に理解してもらうこと必要となります。

抑うつ気分は、一定期間で終息することが多いので食事摂取量が減少しない(減少したとしても程度が軽い)場合は、様子観察のみで良いと考えています。

食事摂取量が極端に減った場合、抑うつ状態が2週間以上持続する場合には薬物療法が必要です。

【抑鬱への薬物療法
従来の抗うつ薬と比較して、副作用が少ないことからSSRIやSNRIが第一選択として使用することが多いです。
また、アルツハイマー病治療薬によるBPSD治療に記載したようにアリセプトの開始・増量も選択肢の一つになります。

私の場合は、アリセプトを使用していない場合や3mgを使用している場合は、アリセプトの開始・増量を考えます。
アリセプトを5mg以上使用している場合は、SSRIやSNRIの使用を考えます。
睡眠障害を伴う場合には、デジレル(SNRI)を使用し、
睡眠障害がなく軽度の場合は、パキシル(SSRI)、重度の場合はジェイゾロフト(SSRI)を使用するようにしています。
食事摂取量がある程度、保たれており時間的余裕がある場合は、少量から開始し漸増。
時間的余裕がない場合には、常用量から開始し、その後に量の調整を行うようにしています。

易刺激性(BPSDの対処法)

  • 2012.11.18 Sunday
  • 09:00

一般的に、易刺激性は
「些細な刺激にも激しく反応し、不快な感情が亢進した状態」
とされています。
反応として「怒り出す」ことが多いので「易怒性」と表現されることもあります。

短時間型の不穏・興奮とは、区別することは困難と思っています。
怒り出した時に、誘因が明らかで、それが些細な場合は易刺激性(易怒性)に分類しています。

そこで、脱抑制症候群の患者は、
「衝動的かつ不適切な行動をとる」
「気を散らしやすく、情緒的に不安定で、洞察力に乏しく、それまでの社会行動レベルを維持できないことがある」


【病期・基礎疾患による易刺激性の特徴】
認知症のテキストの中では、項目を起こして取りあげられていることの少ない症状です。
自験例では、FTD(65.0%) > AD(30.3%) > VD(20.0%) > その他 でした。
DLB患者では、易刺激性を認めた症例はありませんでした。
またアリセプトの代表的な副作用であるので、AD例は疾患自体の周辺症状として出現したのか、アリセプトの副作用として出現したのかを明確に分けることは出来ていません。

【易刺激性への対処法】
医師向けのテキストには、介護によるケアに関する記載は見当たりません。
短時間型の不穏・興奮に準じた対応を取ることになります。

【易刺激性への薬物療法
短時間型の不穏・興奮に準じた薬物療法を行うことになります。

私の場合は、
メマリー→気分安定薬→非定型抗精神病薬の順で使用することが多いです。
メマリーは使用する場合には、これまで記載したように中等度以上の認知症患者に対してアリセプト等と併用することが必要になります。
前述したように、易刺激性(易怒性)はアリセプトの代表的な副作用であるので、アリセプトを使用している場合には、薬剤を追加する前にアリセプトの減量・中止を考慮する必要があります。
アリセプト中止し中核症状が悪化した場合には、レミニール等への変更を考えますが、レミニール自体も、どちらかと言えば抑制的に働くので、活気の低下には留意しておく必要があります。
このあたりは、自分の経験(というか感)によるものですが、アリセプトを中止せずにメマリーを追加する症例も少なからずあります。

脱抑制(BPSDの対処法)

  • 2012.11.18 Sunday
  • 08:00
BPSDの種類と分類」に記載したときに、興奮とともに心理症状・行動症状の両方に分類している症状です。

脱抑制にしろ、不穏・興奮にしろ行動・言動を伴わないと客観的にわからない症状のためと考えています。

認知症テキストブックでは、認知症周辺症状の項目では脱抑制は取り上げられておらず、前頭側頭葉変性症(FTLD)の項目で取り上げられています。
そこで「本能のおもむくままの行動」と記載されています。
「社会的な関係や周囲への配慮がまったく認められず、過ちを指摘されても悪びれた様子がなく(患者本人に悪気はない)、あっけらかんとしている。」
FTDでは自発性の低下が進むと、目立たなくなります。

具体的な症状としては、
・店頭にならんだ駄菓子を堂々と万引きする
・検査の取り組みに神真剣さが見られず(考え不精)自分の気のままに答える
・診察中に鼻歌を歌う
・関心がなくなると診察室や検査室から勝手に出ていく(立ち去り行動)
が取りあげられています。

BPSD(痴呆の行動と心理症状)(国際老年精神医学会)では、脱抑制症候群として取り上げられています。

そこで、脱抑制症候群の患者は、
「衝動的かつ不適切な行動をとる」
「気を散らしやすく、情緒的に不安定で、洞察力に乏しく、それまでの社会行動レベルを維持できないことがある」

以下の症状が脱抑制で認められる症状をして記載されている。
・泣き叫ぶ
・多幸感
・言語的攻撃性
・他者および物体に対する身体的攻撃性
・自己破壊的行動
・性的脱抑制
・精神運動焦燥
・でしゃばる、じゃまをする
・衝動性
・徘徊

NPIでは多幸感、精神運動焦燥は脱抑制とは別に項が設けられており、徘徊は通常「異常行動」に分類しています。

つまり、他の周辺症状(BPSD)と同様に脱抑制も明確に分離することは困難な症状です。

【病期・基礎疾患による脱抑制の特徴】
FTD患者に特徴的な症状と考えられていますが、VD患者でも認めることがあります。
自験例では、6.5%の症例に脱抑制を認めています。
原因疾患としては、FTD > VD > DLB > その他(ハンチントン病)でした。
自験例のAD単独症例では脱抑制は認めていません。
しかし31%のAD例に脱抑制を認めたとの報告や、DLBでは65%の症例に認められるとの報告もあり、自験例とは大きな差があります。
多幸感や焦燥、徘徊を含めるか否かで差が出ているものと考えています。

【脱抑制への対処法】
医師向けのテキストには、介護によるケアに関する記載は見当たりません。
介護者(家族)が精神的・肉体的に疲弊していることが多く、自宅療養中の場合には施設入所を考えます。
また施設に入所したから、症状が改善するわけではないので、薬物療法が必要となります。

【脱抑制への薬物療法
デジレル・レスリン(トラゾドン)、リーゼ、デパス等のベンゾジアゼピン系薬剤、レミニール(ガランタミン)、セロクエル(クエチアピン)が有効とされています。

私の場合は、
レミニール→デジレル→セロクエル→リーゼ・デパスの順で使用することが多いです。
レミニールを使用する場合には、アリセプトが使用されていればアリセプトを中止する必要があります。
比較的早急な対処が必要な症状で、短期的に薬剤を増量する必要があります。
介護者の疲弊が強い場合には、「効きすぎ」の状態まで持っていき、薬剤を減量する方法を取ることもあります。当然ADLは低下しますので、薬物療法開始と同時に介護体制を整えておく必要があります。

レミニールはこれまで述べてきたようにADには保険適応はありますが、FTDやDLBには保険適応はありません。使用する場合にはその点に留意してください。

性的脱抑制に対して、
パキシル(パロキセチン)、シタロプラム(本邦未発売)などのSSRIやアナフラニール(クロミプラミン)、デジレル・レスリン(トラゾドン)などの抗鬱剤が有効であったとの報告があるが、十分なエビデンスはありません。

ベンゾジアゼピン系薬剤(主として長時間作用型)には、脱抑制を副作用として認めることがあるので、その点に留意して使用する必要があります。
また中等度から高度認知症の患者では記憶障害が増悪する点も考慮する必要があります。

不穏・興奮(BPSDの対処法)(123)

  • 2012.10.16 Tuesday
  • 08:00
不穏・興奮ともに定義しにくい項目です。
英語圏では「agitation」という用語が用いられることが多いですが、日本では「不穏(症状)」が最もよく使われている印象があります。
認知症疾患治療ガイドライン2010では、焦燥性興奮という用語が用いられており、「その人の要求や意識障害の錯乱によって生じたとは考えられない不適当な言語、音声、運動上の行動をとること」とされています。

一方、認知症テキストブック不穏は「穏やかでないこと、落ち着かない状態」を意味しますが、明確に定義することは困難と記載されています。
興奮は「一般的に気持ちが高ぶり、抑えられなくなる」ことと記載されています。

Behave-ADでは、不穏は攻撃性の一項目として取り上げられています。

認知症を専門にされていない医師からご紹介いただいた患者さんの紹介状では「不穏」という用語を用いられていることが多いのですが、「陽性・心理症状」全般を「不穏」と表現されている印象を持っています。

以上のように、「不穏」「興奮」は明確に定義づけされておらず、混同して使用されている印象のある用語です。

【病期・基礎疾患による不穏・興奮の特徴】
中等度の認知機能障害がある患者では頻繁に認められます。
 アルツハイマー病では、進行しアパシーを認めるような時期にはほぼ消失します。
基礎疾患による頻度の違いは不明です(論文を見つけられていません)。
自験例では、FTD(65%) > DLB(50%) > VD (40%) > AD(25%)でした。

【不穏・興奮への対処法】
 ・すべての「不穏・興奮症状」に医学的介入が必要なわけではありません。
 ・「不穏・興奮症状」の理由を明らかにし、適切な社会的・環境的・行動的介入を行い誘因を解消する必要があります。

  理由を明らかにするために、不穏・興奮症状になる
  ・時間
  ・人
  ・その他
  を注意して見ていく必要があります。

 [時間]
  ・一日のうち、短時間のみ「不穏・興奮症状」を認めるのか?、
   ほぼ一日を通して「不穏・興奮症状」を認めているのか?が観察の第一歩です。
   短時間の場合には、特定の時間や環境はないかを確認する必要があります。
   日単位や2週間周期で「不穏・興奮症状」の増悪・軽快を認める場合もあります。
 [人]
  ・「不穏・興奮症状」を認める場合に、特定の人が周りにいないかを確認する必要があります。仲の悪い、嫌いな人だけが誘因になるわけではなく、仲の良い、好きな人が誘因となることもあります。
  ・また特定の人が居なくなった場合でも「不穏・興奮症状」を認めることもあります。
   特に介護施設では、家族の面会後に「不穏・興奮症状」を認めることが多いです。
 [その他]
  ・日単位で変動する「不穏・興奮症状」の場合は、排便状況を確認する必要があります。便秘を引き金に増悪することが多く認められます。
  ・2週間程度の周期で増悪・軽快する場合には、レビー小体病(パーキンソン病、レビー小体型認知症)の合併を念頭に置き、パーキンソン病運動症状の有無を確認する必要があります。
  ・視力、聴力など感覚の低下により「不穏・興奮症状」の増悪を認めることがありますので、感覚器の評価を行う必要があります。  

介護的ケアでは
・「安心させる穏やかな口調で話をする」「目的をわかりやすく語りかけ患者を驚かせない」など認知症患者全般にいえる対応は必要です。
・誘因となっている状況や人から、患者を引き離すことが必要です。
  特に介護施設入所直後は、家族の面会後に不穏・興奮症状が増悪することが多いので、家族の面会を控えて貰うことも必要になります。
  便秘を誘因としている場合には、排便コントロールが必要です。

不穏・興奮症状への薬物療法
適切な社会的・環境的・行動的介入を行っても症状が、期待しているレベルまで改善しない場合には薬物療法を行います。

・比較的中核症状が軽度である場合、感覚障害を誘因としている場合には、コリンエステラーゼ阻害薬の投与を考慮します。
 アリセプト(ドネペジル)は、不穏・興奮症状を増悪させる可能性があるので、レミニール(ガランタミン)投与を第一に考えます。
 またメマリー(メマンチン)は前述したように不穏・興奮症状に有効とされていますので、第一選択としても良いのですが、本邦では重症例に対してアリセプトもしくはレミニール、イクセロン・リバスタッチ(リバスチグミン)と併用することが原則ですので、単独では第一選択としづらい事情があります。
すでにアリセプトやレミニールが投与されている場合にはメマリー追加を第一選択に考えても良いと思っています。
また、前述したようにアリセプトの副作用として不穏・興奮症状を認めることがありますので、アリセプトが投与されている場合には減量・中止も考慮する必要があります。

・ほぼ一日を通して「不穏・興奮症状」を認めている場合には、
 抗精神病薬(リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、エビリファイ)、抑肝散の投与を考慮します。
 個人的には(症状:弱) 抑肝散 → セロクエル → リスパダール (症状:強)でコントロールしています。

・一日のうち短時間だけ不穏・興奮症状を認める場合には、
 気分安定薬(抗てんかん薬)投与を第一選択としています。
 認知症疾患治療ガイドライン2010では、テグレトール(カルバマゼピン)、デパケン(バルプロ酸)が有効であったとの記載があります。
 しかし近隣の精神科病院、認知症センターからの紹介患者ではエクセグラン(ゾニサミド)が多く使用されています。
 当院の経験でも、ある意味、発作的な「不穏・興奮」に関して有効である印象があります。

抗精神病薬や抗てんかん薬は抑制系薬剤であり、意識レベル低下や転倒傾向の増悪などの副作用を持ちますので、使用の際にはリスクとベネフィットを計りにかける必要があります。
またこれらの薬剤は、譫妄の原因となる場合があり一見、「不穏・興奮症状」が悪化したように見えることもありますので、正しく評価してください。

但し、リスパダール(リスペリドン)とセレネース(ハロペリドール)は、平成23年09月の厚生労働省保険局医療課長通知「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(保医発0928第1号)」によって、「当該使用事例を審査上認める」とされています。

(※)当院の認知症診療は中等度・重度の患者が中心であり、その経験に基づいて記載しております。そのために教科書的な比率等と異なる場合がありますので、成書もご確認ください。

妄想(BPSDの対処法)

  • 2012.10.12 Friday
  • 08:00
妄想は「外的現実についての間違った推理に基づく不正な確信」「患者の知能や文化的背景に一致せず、正しい論証によって訂正できないもの」と定義されています。(認知症テキストブック)

幻覚の項で記載したように幻覚に伴う妄想もあり、介護者の多くは幻覚と妄想を混同していることが多いです。
また「認知症疾患治療ガイドライン2010(第3章 認知症への対応・治療の原則と選択肢)」でも、Q.「認知症者の幻覚・妄想に対する有効な薬剤はあるか」と項目が起こされているように、一緒に扱われています。
ただ幻覚(幻視)の項で述べたように、幻覚の種類によっては使用する薬剤が異なるので、幻覚と妄想は正しく診断した方が良いと考えています。

また興奮(agitation)等の他の陽性・心理症状他と合併することが多いとされています。

また定義にあるように「訂正できないもの」なので、説明や説得することは多くの認知症患者にとって無意味であるばかりでなく、有害です

「物盗られ妄想」「見捨てられ妄想」など介護者との人間関係悪化に繋がることが多く、早期に対処することが必要です。
妄想の内容は体系化することは少なく、内容も変化しやすいです。
一般的に周辺症状に対する介護での対応を行うことになりますが、改善しない場合が多く 薬物療法が必要になることが多いです。
しかし薬物療法も調整が困難な例が多いです。
私は「介護者の心を折る」と表現していますが、介護者にとって身体的負担より精神的負担が大きく介護意欲を大きく削ぎます。そのため介護施設入所や精神科病棟への入院の原因となる代表的な周辺症状です。

【病期・基礎疾患による妄想の特徴】
妄想は幻視と異なり、病期による頻度の違いは不明です(論文を見つけられていません)。
 自験例では幻視と同様に、重度よりも中等度の方が多い印象です。
 定義((間違った)推理に基づく不正な確信)でも述べられているように、間違っていても推理することができる時期にしか妄想は出現しません。
 中核症状が進行すると「推理」出来なくなりますので、妄想も消失すると考えています。

基礎疾患としては、レビー小体型認知症(DLB)で頻度が高いとされています。
アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(VD)の順に多いとされています。
頻度は論文により大きく異なり、ADで10〜73%の患者に認められるとされています。
自験例では、薬物療法が必要であった妄想は約10%の認知症患者に認めました。

【代表的な(頻度の多い)妄想とケア】
・物盗られ妄想
 妄想の中で最も頻度が高い(18〜43%)ものです。
 ボールペンなどの日常的な物の場合もありますが、通常は財布や通帳など大切なものの頻度が高いです。日常的な物では、眼鏡の頻度が高かったです。(←自験例)
 盗られたと思っている物を介護者が見つけて患者の所へ持っていくと、介護者が盗んだと考える場合が多く、介護者が盗んだ(介護者は泥棒である)という新しい妄想を生むことがありますので、「介護者が見つけて患者の所へ持っていくこと」は避けるべきです。
 介護者が先に見つけた場合には、患者と一緒に捜して一緒に見つけるようにしてください。
 物盗られ妄想を軽減(大切な物を無くさないように)するためには、
 ・財布などは決まった場所に置くようにする。(←繰り返し指導することで、習慣として財布を同じ場所へ置くようになることがあります)
 ・通帳などは鍵のかかる場所へ置くようにする。(←これだけで治まることがあります)

・見捨てられ妄想
 妄想の中で、物盗られ妄想に次いで頻度が高い(3〜18%)ものです。
 介護施設に入所している患者では、自宅で療養している患者よりも頻度が高い印象があります。(残念ながら妄想ではなく、家族に見捨てられている方もいらっしゃり、一概に妄想と片付けられません。)
 判断能力がいくらか保たれている時期に認められることが多い妄想です。
 他の家族の会話が理解できなくなっていたり、自分の介護が負担になっていると邪推したり、家族に無視されるなどのエピソードが影響していることがある。
 本人に可能な範囲で「したいこと」「できること」をしてもらい、それを評価し、本人がなくてはならない存在であることを伝えることで、軽快する場合がある。

・「ここは自分の家ではない」という妄想
 自宅にいる場合と介護施設にいる場合では意味が異なります。
 自宅にいる場合に、見当識障害や逆行性健忘に基づくことが多く、修正は不可能な場合が多いです。
 以前、住んでいた家を自宅と思われる方が多いです。
 帰宅願望・徘徊(自宅へ戻ろうとする)の原因となることが多く、徘徊対策が必要になります。
 介護施設にいる場合は、「介護施設は自宅ではない」ので妄想に分類して良いかどうか疑問です。ただ、実際には「(一人ではもしくは現状の家庭環境)では自宅で生活を継続することは困難である」のに「自宅で生活できる」と判断していることは、ある意味で妄想と判断しても良いと考えています。
 介護施設に入所している場合は自宅にいる場合より、帰宅願望の頻度は高いです。
 帰宅願望、徘徊に繋がることがあります。
 帰宅願望に対して「もう遅いから明日にしましょう」「迎えの人が来るまで待ちましょう」などと対応し、「話を逸らす」ことが有効なことがあります。
 
・「配偶者あるいは介護者は偽物だ」という妄想
 あまり経験しない妄想です。
 但し、この妄想を認めた場合には対象者(ほとんどの場合、介護者が対象になる)を精神的に追い込むことになるので、早急な対処が必要です。
 薬物療法、もしくは介護施設へ入所し介護者から離す必要がある場合が多いです。
 有効なケアはありません。
 介護施設では配偶者ではない人を配偶者と思い込み世話を始めるといった、誤認がありますが、薬物療法が必要になることはほとんどありません。

・「不義」という妄想
 配偶者(あるいは他の家族・介護者)が性的もしくは他の意味で不実を働いていると思い込むものですが、私は経験したことがありません。
 外出時に、行き先を伝える(紙に書いて渡す)、その間に誰かに付き添ってもらうことで軽減することがあるとされています。

【妄想への対処法】
介護者への説明がポイントとなります。
 ・内容が被害的なものでない場合や、本人に不安がなければ介入は不要です。
 ・内容が被害的なものの場合や、本人に不安があれば、介入は必要です。
  ケアで対処可能な場合もありますが、前述したように多くの場合は薬物療法を考慮します。患者のケアのみならず、介護者のケアにも留意が必要です。
  幻覚の場合と異なり妄想は、内容が被害的なものでない場合や、本人に不安がない場合でも、介護者の(精神的)負担が大きい場合には薬物療法を考慮します。

 ・ケアの基本は妄想を否定したり、安易に肯定したりすることはせず、患者の訴えを傾聴し、受容的・共感的な態度で接し、安心を与えることです。
  しかし通常、患者は介護者に対して繰り返し妄想の内容を訴えます。
  毎回、同じ内容の応答でも良いとされていますが、この繰り返しも介護者の精神的ストレスとしては小さくないものです。
  家族が介護している場合には家族関係が壊れてしまいますので、早急な対処が必要です。
 ・前述したように、認知症が進行し「推理できなくなる」時期には、妄想は消失することを、介護者に伝えるようにしています。
  妄想の強い時期をグループホーム等の介護施設で過ごし、妄想が消失すれば自宅へ戻れることがあることを家族(介護者)に伝え、一時的な介護施設の利用を勧めることもあります。

【妄想に対して有効とされている薬剤】
リスパダール(リスペリドン)、ジプレキサ(オランザピン)、エビリファイ(アリピプラゾール)等の非定型抗精神病薬です。
いずれの薬剤も原則的に保険適応外ですので、注意が必要です。

但し、リスパダール(リスペリドン)とセレネース(ハロペリドール)は、平成23年09月の厚生労働省保険局医療課長通知「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(保医発0928第1号)」によって、「当該使用事例を審査上認める」とされています。

(※)当院の認知症診療は中等度・重度の患者が中心であり、その経験に基づいて記載しております。そのために教科書的な比率等と異なる場合がありますので、成書もご確認ください。

幻覚(BPSDの対処法)

  • 2012.10.09 Tuesday
  • 08:00
幻覚は「現実の外的刺激に関連しない間違った知覚認知」と定義されています。(認知症テキストブック)
幻覚体験には妄想的説明を伴う場合があります。

【病期・基礎疾患による幻視の特徴】
幻視は軽度や重度よりも中等度に多く認めます。
基礎疾患としては、レビー小体型認知症(DLB)に多く(約80%)認められます。
 DLBでは、初発症状として幻視を認めることがあります。
アルツハイマー病(AD)では、約20%に認めるとされています。

【幻覚の種類】
五感(人間の感覚はおおよそ9種類に分類されていますが、便宜的に使用しています。)以外にも、「実際は誰もいないのに誰かがいるような気配を感じる」などの幻覚を訴える方もいらっしゃいます。(これは幻覚に分類すべきものか、妄想に分類すべきかは疑問の余地はあります。)

当院の自験例では、
幻視 > 幻聴 >> 幻触覚(2人) > 幻気配(1人)であり、
 幻臭、幻味は経験したことがありません。
教科書的にも幻覚のなかで幻視(約30%)が最も多いとされています。
 幻聴は約3〜10%に認めるとされており、その他の幻覚は稀とされています。

幻視の頻度は、人 > 虫(黒い点) > 小動物した。
小動物の中では、犬、猫、蛇が多く、最も大きい動物は鹿でした。

人、小動物(色彩あり)と虫(黒い点、黒い人影を含む)は発症機序が異なっていると考えています。(←自験例よりの印象です。テキストにはあまり機序は載っていません。)

人、小動物(色彩あり)を中心とした幻視は、
 ・一次視覚野(後頭葉内側)の機能低下によって二次視覚野へ送られる信号が減少する。
 ・二次視覚野は見たいものを見始め、これが幻視となる。
 と考えられています。
DLBでは一次視覚野の代謝が低下していることが多いのですが、
ADでは、一次視覚野の代謝は保たれることが多いです。
つまり、このタイプの幻視はDLBに多く認められます。
これに関しては、論文は多数出ております。
 
虫(黒い点、黒い人影を含む)を中心とした幻視は、
 L-dopa製剤等の抗パーキンソン病薬内服時に認められるものと似ており、
 ・ドパミンの過剰に伴う幻視
 と考えています。

【幻覚への対処法】
介護者への説明がポイントとなります。
 ・内容が被害的なものでない場合や、本人に不安がなければ介入は不要です。
 ・幻覚を否定することは意味がないばかりか、害がある場合が多いので、
  否定しないようにしましょう。
 ・本人は幻覚と気付いていないことがあります。
  つまり「幻覚がありますか?」という質問では、幻覚の有無は確認できないということです。

幻覚の有無は介護者に「何かあなたに見えないものが見えていたり、聞こえないものが聞こえている様子はないですか」と確認する必要があります。
そして、「怖がっている様子や、不快を訴えることはないですか?」と質問することで、内容が被害的なものでないことや、本人に不安がないことを確認する必要があります。

視覚失認に関連した幻視、誤認の場合は、照明の最適化が重要になります。
 夜、眠るときに照明を消さないだけで幻覚と思われていたものが消失することがあります。

内容が被害的なものの場合や、本人に不安がある場合は薬物療法を考慮します。
 ・人、小動物(色彩あり)の幻視の場合(またはDLBを疑う場合)は、アリセプトを使用
 ・虫(黒い点、黒い人影を含む)の幻視、幻聴の場合は、向精神薬(リスパダール、セロクエル等)を使用

但し、アリセプトはDLBに保険適応はありません。
 DLB患者に抗精神病薬を使用する場合は、抗精神病薬の感受性亢進を認めることがありますので、少量から開始することをお勧めします。


アリセプト使用上の注意(2)

  • 2012.09.21 Friday
  • 08:00
 アリセプトの使用上の注意点はエーザイのホームページをご覧ください。

この記事ではその中で中等度以上の認知症患者の診療に際して、特に注意が必要な点をピックアップします。


第讃 注意すべき副作用とその対処法
Q.「アリセプトの主な副作用にはどんなものがありますか?」
A.「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症に対するアリセプトの主な副作用は、食欲減退(1.79%)、悪心(1.76%)があります(軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症承認時、及び再審査終了時(使用成績調査))。
高度のアルツハイマー型認知症に対するアリセプトの主な副作用は、食欲減退(8.81%)、悪心(8.03%)、嘔吐(6.99%)、下痢(4.92%)があります(高度のアルツハイマー型認知症承認時)。」

頻度として高いものは嘔吐・下痢等の消化器症状が挙げられていますが、3mgで開始し増量するとしても、2週間以上経過してから5mgへ増量した場合には、それほど目立つ症状ではありません。
自験例では、消化器症状が原因でアリセプトを中止・減量したことはありません。
食欲減退も経験したことはないのですが、アパシーの増悪に伴う経口摂取量減少はそれなりの頻度(5%程度)で認めています。

医療・介護上問題となる副作用は、
‐覗膣供興奮などの陽性心理症状
⊇脈、それに伴う意識消失発作
と考えています。

Q.「アリセプトによって精神症状(興奮、焦燥など)が現れた場合の対処法について教えてください。」
A.「個別の患者様に起こる症状についてどのような対処が適しているかを示唆するデータはありません。一人ひとりの患者様の症状の発生状況、程度、経過などを診断いただき、適切と思われる処置をお願いいたします。」

アリセプト内服で最大の問題となるのは、興奮、焦燥、易怒性などの陽性心理症状です。

.▲螢札廛罰始・増量し、アパシーなどの問題となっている事柄は改善したが、陽性心理症状が出現した場合
(Plan A)
 アリセプト減量。1mg単位で減量します。
 評価はアリセプトの半減期を考えて3日目に行うのが妥当と考えています。
 問題の改善と、心理症状の増悪を計りにかけて、介護者の負担が最も軽くなる量で維持します。
 1mg単位で調整する場合は散剤で調整することになります。
 都道府県によっては「精神科(神経科、心療内科)」「神経内科」以外の診療科医師が1mg単位で調整した場合にはレセプト上、査定されることがあります。

(Plan B)
 メマリーを併用します。
 (第一三共のホームページを参照してください。但し会員登録が必要です。)
 一般的な使用法は、5mgから開始し20mgまで増量することです。
 しかしアリセプトと同様で、問題となっている心理症状が解決した場合には、その量で止めることをお勧めします。
 メマリーは「アルツハイマー病治療薬によるBPSD治療」に記載したように、心理症状に抑制的に働きます。
 過剰投与になった場合には、アパシーなどの意欲低下や睡眠時間の延長などの影響が出てきますので、過剰投与にならないような調整が必要になります。
 自験例ではメマリーを使用した約50%の患者さんで、10mg、15mgで留めています。
 また、約10%の患者さんでは、アパシーの増悪により中止を余儀なくされています。

見当識障害や手続き記憶障害に対してアリセプト開始・増量した場合、問題となっている事柄が改善していないのに、陽性心理症状を認めた場合
 (アパシーに対してアリセプト開始・増量し、陽性心理症状が出現した場合にはアパシーは改善していると判断しても良いと考えています。)
(Plan A)
 アリセプト中止。
 レミニール開始します。8mgから漸増し、16mgまで増量。
 レミニール16mgがアリセプト5mgと同程度の効果を示すと考えられています。
 消化器症状が強くない場合は、アリセプトを中止した翌日からレミニールを開始します。
 消化器症状が強かった場合には、1〜2週間の休薬期間を取ります。

(Plan B)
 メマリーを併用します。
 使用方法は,Plan Bと同様です。併用することで中核症状の改善が見込めます。
 但し、アリセプト+メマリーの薬価は高いので、経済的負担が増えることは説明しておく必要があります。

Q.「アリセプトによって失神が発現することがありますか?」
A.「アリセプトの重大な副作用として、失神(0.1%未満)が報告されています。
アリセプトはコリン作動性に心血管系に作用するため、徐脈などを起こすことにより影響を及ぼしている可能性があります。

あまり知られておらず、見過ごされていることが多いアリセプトの副作用が「徐脈」です。
その際には、アリセプト中止を考慮する必要があります。
主な機序としてコリン作動性作用が考えられており、レミニールへの変更も難しいです。
中核症状の増悪のために介護上支障が出てくる場合には、保険適応上の問題はありますが、メマリー単独投与への変更を考えた方が良いでしょう。

アルツハイマー病には、意識消失を伴う「痙攣発作」を併発することがあり、鑑別が必要です。

アリセプト使用上の注意(1)

  • 2012.09.19 Wednesday
  • 08:00
 アリセプトの使用上の注意点はエーザイのホームページをご覧ください。

この記事ではその中で中等度以上の認知症患者の診療に際して、特に注意が必要な点をピックアップします。

第蕎 作用機序と適応疾患
Q.「アリセプト3mg投与で効果がみられたら、そのまま3mg投与を継続してもよいですか?」
A.「3mg/日投与は有効用量ではありません。軽度・中等度アルツハイマー型認知症に対する有効用量は5mg/日ですので、用法・用量通り、5mg/日への増量をお願いいたします。」

アルツハイマー病患者では、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:コリンとアセチルからアセチルコリンを合成する酵素)活性が低下することが知られています。
またコリン作動性神経細胞が脱落することも知られています。
ChAT活性の低下により、アセチルコリン濃度が低下します。
アリセプトはアセチルコリンエステラーゼ(AChE:アセチルコリンを酢酸とコリンに分解する酵素)阻害薬ですので、減少しているアセチルコリンを分解しないことで枯渇を防ぐことになります。
認知症患者でも程度でよって、ChAT活性の低下の程度が異なることから容量依存性の可能性があります。つまり5mgでも過剰投与になってしまう可能性があります。

中等度以上の認知症患者に投与する場合は、3mgで問題となっている事柄が解決したのであれば、3mgを継続すべきです。(3mgで維持しても、レセプトで査定されることは原則ありません。)
また5mg内服している患者さんで増量する場合も、必ず10mgまで増量しないといけないわけではありません。漸増し症状が落ち着いたなら7.5mgや8mgで維持しても良いです。

ここで、無理をして5mgや10mgにすると、興奮、易刺激性などの陽性心理症状を呈する場合が多く、介護者のアリセプトに対する不信を招いてしまうので、中止をせざるを得ない場合があります。

第絃 臨床成績
Q.「アリセプトの効果は服用後どのくらいの時点で判定すればよいのでしょうか?」
A.「軽度・中等度のアルツハイマー型認知症患者様を対象とした臨床試験では、12週後から認知機能の改善が認められています。したがって、アリセプトの効果は3〜4ヵ月間投与後、判定するようにしてください。」

認知機能改善の評価は12週間必要とされていますが、アパシーや幻覚などBPSDに対する効果は著効例では翌日より改善が認められ、効果が認められる多くの症例で3〜4日目に改善が認められます(←自験例)。
長くてもアリセプトの血中濃度が安定する2週間目に評価可能です。

但し、アリセプト開始・増量するとアパシーが増悪する症例も、それなりの頻度であるので、その場合は中止したほうが無難です。

アパシー(apathy)(BPSDの対処法)

  • 2012.09.17 Monday
  • 08:00
アパシー(apathy)は認知症診療を行っていない先生方には馴染みの少ない言葉だと思います。
a-pathyの「a-」は「a-pnea」などの「a-」と同様に「ない、無」の意味です。
「-pathy」は「sym-pathy」の「-pathy」と同様に「気持ち、感情」を表します。

つまり「感情がない」ことを示す言葉なのですが、無為、無気力、無関心、無感動等と訳されています。

テキストではアパシーは、「以前行っていた趣味や家事など日常の活動や、身の回りのことに興味を示さなくなり、意欲が喪失し、かかわりあいを避け、発動性が低下すること」とされています(認知症テキストブック)。

抑鬱症状との鑑別は、
「抑鬱症状で認められるような不快な気分や、自律神経症状を伴わない」ことが挙げられています。

しかしアルツハイマー病では、初期に「抑鬱期」があり、その後に「多幸期」があり、その後に「アパシー」が出現することが多いので、中等度以降で「なんとなく元気がない、○○しなく(出来なく)なった」は、抑鬱よりもアパシーを疑うべきです。

私の場合は食事の場面で、
食事が進まない時に、食事を勧めた時に「食べたくない」との反応がある場合には抑鬱を疑い、
言葉での反応がない場合にはアパシーを疑います。
最終的には、NPI等の下位項目の点数をつけ、判断することになります。

アルツハイマー病のアパシーの治療の第一選択は、アリセプト投与です。
通常の投与方法と同様で3mgから開始することになります。あとは適時調整することが必要です。
私の場合は1mg単位(散剤)で調整することもありますが、2.5mg、3mg、5mg、8mg、10mg(錠剤)で調整しています。

アリセプト1

前頭側頭型認知症のアパシーはアルツハイマー病と異なり初期から認めることがあります。
非定型抗精神病薬(セロクエル等)が有効であったとの報告もありますが、一般的にはアパシーを増悪させる印象があります(←自験例)。

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